宇宙技術開発株式会社

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ロケット、衛星、情報通信、宇宙ステーション、射場まで。システム開発も含めた運用のエキスパート。

欧州宇宙機関の補給機ATV

※ 2019年改定予定です

はじめに

国際宇宙ステーションの日本実験モジュール「きぼう」が建設され、日本では、補給物資を運ぶための無人の輸送機「宇宙ステーション補給機(H-II Transfer Vehicle: HTV)・こうのとり」が製造されました。

HTV-1号機は2009年9月11日に打ち上げられ、補給後に同年11月2日に大気圏に突入・投棄されました。なお、2号機は2011年1月22日打ち上げ、同年3月30日に大気圏突入・投棄、3号機は、2012年7月21日打ち上げ、同年9月14日に大気圏突入・投棄されています。

欧州でもコロンバス(COLUMBUS)という与圧実験設備が、STS-122シャトルミッションで打ち上げられ、国際宇宙ステーション上に取り付けられています。

そして今回取り上げたのは、2008年3月9日に打ち上げた欧州の補給機ATV(Automated Transfer Vehicle)。このATVは5号機まで開発されますが、1号機は、「海底二万マイル」など多くのサイエンスフィクションを生み出したフランスの有名なSF作家の名にちなんで、「ジュール・ヴェルヌ(Jules Verne)」と命名されました。

アリアン5型ES
上記はイメージですが、こんな風にATVはアリアン5型ロケットのフェアリング中に収められています。

欧州補給機ATVの概要

欧州補給機ATVは、アリアン5型ESロケットで打ち上げ後、現在国際宇宙ステーションにドッキング、水や空気、推進剤の他、貨物を国際宇宙ステーションに補給しています。ATVは、無人補給機で人を乗せるためのものではありません。

ATVは、デブリ回避、計画的な軌道調整などの目的があれば、約300~400トンの宇宙ステーションの軌道高度を上げさせる能力をもっています。


上記はATVイメージ

ATV-1号機は、ステーションに初めてドッキングするにあたり、事前に接近試験(最接近は2008年4月1日(火)午前1時38分)が行われました。ATVが、試験時にはステーションのロシアのサービスモジュール「ズヴェズダ(Zvezda)」のすぐ近くの36フィート以内(約10.8m)に接近した後、国際宇宙ステーション第16次長期滞在ミッション搭乗員から、64フィート(約19.2m)地点まで離れるよう指示が送信されました。これら一連の作業実施により無人補給機の安全なドッキングが検証されたことになります。4月3日(木)午後11時45分頃には、ESAのATV制御センターからの制御、ロシアミッションコントロールセンター、ジョンソン宇宙センターの飛行制御の元で、実際にドッキングが遂行されました。

4月4日(金)には、空気フィルタリング装置が取り付けられ、5日(土)には搭乗員達が中の装置等の他、ズヴェズダのタンクに推進剤、酸素、飲料水を移す運用の準備が開始されました。また、4月25日(金)ATVの噴射により初めて国際宇宙ステーションの軌道変更が実施されました。同6月19日(木)には、第二回目の噴射が約20秒間にわたって続き、国際宇宙ステーションの高度を7kmほど上げるのに成功しました。


上記はATV-1は一番左にドッキング

なお、ATV-1は、その後約5ヶ月国際宇宙ステーションに残り、2008年9月6日にハッチを閉めて切り離され、自身の燃料で軌道制御を行い、9月29日に太平洋上空で大気圏に再突入して燃え尽きました。

無人補給機では、既にロシアのプログレス(Progress)が活躍していますが、この欧州補給機ATVでは、プログレスの3倍の貨物が搭載できるとあって注目されます。実はアリアンV型ロケットで打ち上げられた中でも最も大きなペイロードでもあります。ATVは、国際宇宙ステーション共通経費のESA負担分を金銭の替わりに物資補給で代替するという目的も持っています。また、ATVの技術的なねらいは、ESA内での自動的なドッキングシステムの開発・確立にあります。ESAによると、5機の製造予定があります。

1号機ではATV自身の推進剤や国際宇宙ステーションの軌道修正のための推進剤を多く搭載していますが、今後も様々な使い方が期待されています。なお、1号機の特別な積荷には船名ともなったフランスの有名なSF作家ジュール・ヴェルヌ(Jules Verne)のイラスト入りの手書き本も搭載されています。

主なイベント 実施日時・予定(日本標準時刻)
ATV-1打ち上げ 2008年3月9日(日)午後1時3分
ATV-1国際宇宙ステーションドッキング
デモンストレーションにおける最接近
2008年4月1日(火)午前1時38分
ATV-1国際宇宙ステーションへドッキング 2008年4月3日(木)午後11時45分~52分
空気フィルタリング装置設置のため
ハッチが開けられ搭乗員が短時間入室
2008年4月4日(金)午後7時15分~
ATV-1ハッチが開けられ貨物運び出しなど
準備作業開始
2008年4月5日(土)午前3時15分頃~
ATV-1噴射による国際宇宙ステーションの
軌道変更
2008年4月25日(金)午後1時22分頃
ATV-1噴射による国際宇宙ステーションの
軌道変更
2008年6月19日(木)午後3時42分頃
ATV-1国際宇宙ステーションから切り離し 2008年9月6日(土)午前6時29分頃
ATV-1太平洋無人地帯へ投棄 2008年9月29日(月)午後10時36分頃
主なATV仕様項目 内容
太陽アレイを含めた全長 約22.3m
太陽電池アレイ面積 33.6 平方メートル
(各8.4平方メートルが4枚)
内部与圧領域 48立法メートル
電力出力 4800W
ISSへの貨物輸送能力 8.3トン+2.3トン
ATVの搭載推進剤
(ドッキング時にはISSの軌道制御にも利用される)
5.8トン
  • モノメチルヒドラジン 2200kg
  • 酸化窒素 3600kg
ATVからISSに補給される推進剤 856kg
nsymmetrical dimethylhydrazine (UDMH)
oxidiser, nitrogen tetroxide (N2O4)
ISSの軌道制御に使われる
ATVからISSに補給される水 270kg
搭乗員の飲料や食料をもどすなど
ATVからISSに補給される酸素 21kg ISSでの大気として利用
ATVからISSに補給される
ドライカーゴ(乾貨物)
1.3トン
食料、衣服、スペアパーツなど

また、ATV-2号機である「ヨハネス・ケプラー」は、日本時間2011年2月17日(木)午前6時50分打ち上げられました。約4ヶ月にわたるミッションで補給を終え、2011年6月20日(月)午後8時46分に国際宇宙ステーションから切り離されてから大気圏突入噴射を実施、2011年6月21日(火)午前4時59分頃南太平洋へと落下した模様です。計画通り機体は燃えました。その際、再突入ブレークアップレコーダー(REBR:ATV-2の再突入時の環境データを記録する)の回収には残念ながら失敗してしまいました。日本のHTV-2ではこのREBRのデータ取得に成功し、温度、加速度、回転率など貴重なデータが収集されました。

更に、3機目にあたるATV-3号機は、イタリアの著名な物理学者で、欧州宇宙研究機構(ESRO)の設立やESAに関しても大きな貢献をした人物である「エドアルド・アマルディ」と命名され、日本時間2012年3月23日(金)午後1時34分に打ち上げられました。同3月29日(木)午前7時31分には国際宇宙ステーションとドッキングし、285kgの水や約860kgの燃料など各種消耗品等を補給しました。

4機目にあたるATV-4号機は、は相対性理論などで有名な「アルバート・アインシュタイン」と命名。日本時間2013年6月6日(木)午前6時52分頃打ち上げ、燃料以外の積載荷物量が最も多く、3Dプリン ターで作られた宇宙用工具箱、コロンバス用の予備のウォータポンプなども搭載されました。

ESAによれば、2014年にATV-5号機の打ち上げが計画されており、ATV-5号機は宇宙におけるビッグ・バン理論の提唱者「ジョルジュ・ルメートル」と命名されています。

<参考記事サイト>

<参考サイト>
ESAの補給機ATVのページ(英語)へ