宇宙技術開発株式会社

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ロケット、衛星、情報通信、宇宙ステーション、射場まで。システム開発も含めた運用のエキスパート。

宇宙からの通信技術に懸ける

※ 2019年改定予定です

衛星TVの普及

日本でも衛星放送開始後30年近く(1986年12月BS放送開始)が経過し、衛星を中継したテレビ放送はすっかり普及した感があります。また、日本では設備さえあればどこでも放送が受信できるという状態にあります。

衛星によるTV放送の開始により、広い地域で沢山の番組を視聴できるようになりました。衛星放送は概して高い周波数域を利用しており、多くの情報が取り扱えるため、地域で視聴できるチャンネル数が格段に増えました。またデジタル化技術の普及により、地上側も多くの放送を簡単に映像化することができるようになっています。ただし、衛星が高波長域を利用しているため天候(雨や雪)により受信状態が悪くなるという問題もあります。

衛星放送では、多くの番組を主局(管制局)がコントロールし、衛星を中継して各地に電波を送ることで成り立っています。

通信波長

携帯移動体通信の普及

携帯電話や移動体通信に使うマイクロ波は、高い周波数の方が多くの情報を載せることができるという利点があります。昔は軍用や宇宙通信で利用された帯域ですが、データ量・利用数共に需要が増え、こうした移動体通信やオフィス内の無線、インターネット中継用の帯域になどと限定を加えた利用が進みました。

日本の携帯電話・移動体通信は、直進性(指向性)が強く、利用者のアンテナや設備が小型にできたことを背景に、ここ10数年のうちに爆発的に普及しました。移動体通信では取り扱いデータ量が増え、データ転送方式を規定することでTV放送受信・データ伝送などが可能な便利な時代となりきました。

では、衛星通信における携帯電話や移動体通信についてはどうでしょうか。ここ数年で衛星利用通信に関しても、機器の小型化・高機能化が進んでいます。現在船に衛星通信用アンテナを装備していることが当たり前になってきています。電話、FAX、インターネットが利用できるものの、地上に比較するとコストは高めになっています。日本ではインマルサットやイリジウム、スラーヤ衛星の端末を利用することができ、東日本大震災を受けて緊急時の衛星回線の重要性についても見直されてきています。

今までの衛星通信

地上網を駆使した移動体通信の普及は、日本のように人が比較的密集して住んでいて国土が狭い場合には、地上中継などの設備を多く設置することができるため成り立っているシステムです。近年では東南アジア他海外島嶼地域も無線中継を活用することで普及が進みました。衛星TV放送についてもアフリカアジア地域含め世界中の地域で進んでいます。

衛星通信による電話やインターネット利用などについては、数年前まで経済規模が小さく、固定通信が不通になった際や、緊急通信の必要性から存在している「冗長系回線」と考えられていました。しかし、衛星TVだけでなく多くの通信需要が発展途上地域を中心に高まり、世界的な普及が始まりました。

※「冗長系」は、IT社会や地上から隔絶された宇宙の業界では、馴染み深い言葉で、通常使っている方法がだめになった場合の「バックアップ設備」、とか「予備設備」とかいわれるものです。

日本ではIT格差とよばれるほど恩恵を受ける地域に偏りがあり問題となっていました。現在でも「デジタルデバイド」という言葉が示すようにIT社会で、データ転送量や情報の伝達そのものに格差があり、ひどい場合にはそういった情報網から隔絶される場合があります。

衛星通信の長所
衛星通信システムの長所の例

離島や非常に険しい山間部などが筆頭に挙げられていますが、財政難の問題からこれらに有効な衛星通信技術普及が活かしきれていないのが現状です。一方、広い国土の米国や、国がまたがる通信の必要な欧州などは、早くから衛星の活用と通信の重要性が考えられてきました。日本と異なり地上設備を整備するよりも衛星の方がコストパフォーマンスが良いという理由も背景にあります。日本でも東日本大震災などの災害通信見直しのため現在衛星通信の重要性が見直されてきています。

これからの衛星通信

地上・衛星のそれぞれの特長をこれからは上手く活用しようという考え方が主要になってきています。いずれにしても衛星通信技術の革新が日本に必要であるのは確かなようです。放送の利便性の一層の向上と、アップリンク側の技術の向上がこれにあたると考えられます。

通信衛星では、地球観測の衛星のように、約36000km静止軌道上のものと、もっと低軌道で地球を周回しながら、複数の衛星で広い地域をカバーするものの2種類があります。

現在では、BS、CSなど固定地域放送へのサービスから始まったJCSATSuperBirdなどの衛星から、NStar(エヌ・スター)Inmarsat(インマルサット)など海上通信から移動通信、Intelsat(インテルサット)Grobalstar(グローバルスター)のよう多くの衛星で全世界をカバーする移動通信網を目指したものまで様々な衛星があります。

日本上空の通信・放送衛星
日本上空の通信・放送衛星例

BS、CS、NStarなどの多くの通信・放送衛星は、静止軌道上(地球から見た見かけ上の位置が変わらない軌道)に位置し、通信を行っています。

 

日本には、後述するGPSと同じような機能を持つ準天頂衛星、技術試験衛星VIII型(ETS-VIII「きく8号」:2006年12月18日打上げ)超高速インターネット衛星(WINDS「きずな」:2008年2月23日打上げ)を将来インフラとしてIT社会に貢献する「i-Space利用実験計画」と呼ばれるプロジェクトが進めらました。その中のETS-VIII、WINDSは、いずれも静止軌道上の衛星です。

ETS-VIIIは、東経146度の静止軌道上に位置し、衛星通信と同時に時刻精度の向上などの実験が実施されています。

時刻精度の向上については、GPS搭載の基準になる精度が求められ、原子時計が搭載されています。またそのサービスエリアはアジアのほとんどを含む広いものです。通信では、他の衛星が大容量通信のためにKu帯を主体に利用しているのに対し、送受信(アップリンク/ダウンリンク)ともにS帯を利用しています。静止軌道にありながら移動体通信を目指したもので、同じ出力の場合にはS帯の方が降雨などの悪条件に強いというメリットを利用し、災害時の連絡に関する実験などを実施しています。

更に、衛星の形状はなるべく地上側の送受信機が小さくてすむように、今までにない大型アンテナが工夫されました。 また、広い領域を一度にカバーできるというメリットも併せ持っています。

携帯端末のように小さいハンドヘルド端末とアンテナ口径が大きい地球局とでは、通信範囲の広さも違ってきますが、ETS-VIIIではビームを集中させることによりハンドヘルド端末でも国内の広い範囲で通信できる仕様になっています。

WINDSは東経143度の静止軌道上に位置し、Kuよりも更に高い周波数帯のKa帯を利用、1.2Gbpsという大容量の通信が可能です。アップリンクにも、Ka帯を利用するため、小型のVSAT(超小型地球局)の開発も進められています。

システムとしては、固定地域を結ぶアンテナと、アンテナを動かし中継域を変更することができる可変アンテナを持っています。また、Ka帯がより天候に左右されやすいことを考慮して、衛星本体側に降雨などの天候に対抗するために、ビーム出力を変更できるマルチポートアンプを搭載しています。

WINDS 超高速インターネット衛星
WINDSの通信ビーム例

海外との通信回線は、海底ケーブルの増強が進められていますが、衛星回線はもしもの時でも自国の回線が利用できるというメリットを生み出します。

小型のVSAT(超小型地球局)って何だろう?と思われる方もいるかもしれません。一昔前であればKa帯を使う宇宙通信を使ったスパイ活動に使われたような、スーツケースにおさまりアンテナを広げると通信できるものなどを想像してみてください。あるいは、ライブ中継局のアンテナが車載規模よりずっと小さくなった場合を考えて下さい。受信のみでなく大容量の送信ができるのがこの超小型地球局です。Ka帯の送信も可能にするVSATの開発・特に小型化は技術的にも高度なものです。

衛星側のシステムも地上側のシステムにしても、海外品では様々な実用例がありますが、今回は国産システムとして様々な技術をあわせて提供していく衛星になっています。

さて、インマルサット-P(Inmarsat-P)やグローバルスター( Grobalstar)は、前述した静止軌道の衛星と異なり、多くの中・低軌道衛星で運用されています。

中・低軌道の複数の衛星を使うシステムの場合、静止軌道である約36000kmに比較すると、ずっと低い1000km程度から10000km程度の高さで、地球に対し様々な角度で回る衛星を、複数利用します。高度が低い衛星のメリットは、通信の遅れが減少することです。

低軌道の通信衛星が周回するイメージ
周回衛星システムの例

例えば、静止衛星のシステムを使う場合、呼びかけをするのに約36000kmを往復し、返事を返すためにまた往復を要します。自分が声を発してから、相手の回答が帰ってくるまでに、他のシステムロスを含めなくても、往復約144000kmの通信のためだけに約0.48秒の遅れが生じます。通信の場合、この遅れが10分の1から100分の1となればより自然にやりとりができるメリットが出てきます。

しかし、この方法はカバー域を大きくするために、衛星がより沢山必要です。そのため、衛星の打ち上げ及び地球局設備導入と運営に莫大な費用がかかるため、事業がなかなか育たず、中断した例も多くあります。

周回衛星を複数、低軌道衛星を多数使うサービス

計画名 計画概要 計画当初の打ち上げ個数
ICO(Inmarsat-P:インマルサット-P)システム 高度約10,355km、軌道傾斜角45度の2つの軌道面に、各5機の衛星、及び予備各1機を配置。世界中に配置された12の基地局を使い、24時間地球のどこからでも通信可能。 12機
IRIDIUM(イリジウム)システム 高度約780kmの6つの極軌道面(軌道傾斜角86度)に各11機配置された衛星は、前後左右の衛星と衛星間リンクを通じて通信。 66機
ODYSSY(オデッセイ)システム 高度約10,370km、軌道傾斜各56度の3つの円軌道面に、各4機の衛星を配置。 12機
GLOBALSTAR(グローバルスター)システム 高度約1,414km、軌道傾斜角52度の8つの軌道面に、各6つの衛星、及び予備各1機を配置し、世界主要9地域をカバー。現在第二世代システムと入れ替わり中。 48機
+8機(予備)
ORBCOM(オーブコム)システム 高度約785km、極軌道面に2機、軌道傾斜角45度の3つの軌道面には、各8機の衛星を配置し、全世界をカバーする移動帯通信サービスを実施する。 26機

<参考サイト>

測位システムと通信の併用による利便性向上

こうした、衛星のメリットを更に高めようというのが、GPSやGLONASSなどの測位システムとの組み合わせです。GPSシステムの活用は日本の携帯電話やカーナビゲーション利用では既に定着した技術です。

通信衛星は毎年10~20は打ち上げられていますが、そのほとんどが商業利用、放送事業、通信やインターネット・電話のための回線確保などに使われます。 米国やロシアだけではなく、欧州・中国・インド・日本などのものもあります。

一方、測位衛星では、米国で稼働しているGPSシステムではコンスタントに追加や替えのためGPS衛星を打ち上げており、一番よく知られています。米国のGPS衛星は、毎年1,2機は補間や旧衛星との交代のために打ち上げられていますが、全体として測位衛星打ち上げは、通信衛星に比較すると打ち上げ数はひかえめです。

海外でも同じような測位衛星の打ち上げ計画が進められています。ロシアでは「グローナス/GLONASS」、欧州では「ガリレオ/Galileo」という衛星システムが位置計測サービスのために進められ、衛星が打ち上げられています。米国GPSに対しサービスが遅れ気味にも見えますが、両者の共同計画も持ち上がるなど、近年様々な動きが見られます。

また、実際のこれら実用システム以外にも、位置測定技術向上のためにインドや中国など各国が衛星を打ち上げ・計画しています。

気になる計画の進み具合ですが、ロシアのGLONASSは既に多くの衛星が打ち上げられ、米国GPSとの共同のInternational GPS Service(IGS)ネットワークが稼働しています。欧州のGalileoシステムでは、試験衛星初号機GioveAが2005年、2号機GioveBは、2008年4月に、その後実証機が2011年10月にGIOVE-A,Bが打ち上げられました。

続く2機が2012年10月に打ち上げ予定であり、全体計画としては、27機とスペア機が3機の合計30機の予定になっています。(右の図では小さいですが黄色い丸に青い羽のみえるひとつひとつが衛星)

Galileo(ガリレオ)
欧州のGalileoシステムの例

近年はギアナ局に建設したソユーズ射場を利用しており、2010年10月6日には地上局としてニューカレドニアにも追加局を置くこととなりました。2010年10月25日には、ガリレオ運用の企業側の調印も行われました。

一方、日本では「i-Space」計画の中の「準天頂衛星(QZSS)みちびき」があります。2010年9月11日に初号機が打ち上げられましたが、「準天頂衛星みちびき」は、測位精度向上のため複数の測位衛星から成るシステムとして考案されています。

準天頂衛星は、他の測位衛星より高高度の軌道をとります。これは、日本で利用している米国のGPS衛星が山あいなどで視野が遮られてしまい、3機のGPSなどの測位衛星の電波を受信できない場合、より高い角度に見え電波を受信できる準天頂衛星を利用することで、より正確に場所が特定できるという試みです。現在の軌道は日本付近の上空を手厚くサービスできるよう計画がたてられています。先のETS-VIIIでの技術開発もフィードバックし日本でも自国の技術向上を着々と進めつつあります。

<参考サイト>

主な測位システム(計画中含む)

衛星 GPS(GlobalHigh Energy Solar Spectrosocopic Imager) GLONASS(GLObal'naya Navigatsionnay Sputnikovaya Sistema) Galileo(GIOVE-A,B-) 準天頂衛星「みちびき」
(QZSS : Quasi-Zenith Satellites System)
米国(NASA) ロシア 欧州(ESA) 日本(JAXA)
概要 軌道傾斜角55度
60度ずつずれた軌道面で最終的には24個の衛星がカバーする予定
高度約26,600kmの中軌道
軌道傾斜角64.2-65.6度
120度ずつ離れた3軌道面に各衛星は45度ずつ離れて計24個の衛星配置
高度約19000km
約8日回帰軌道
56度ずつずれた3つの円軌道面に27機の衛星配備+3機のアクティブスペア
高度約23,222kmの中軌道
初号機高度は静止衛星高度近い3万2千~4万km
軌道傾斜角約40度
複数機を計画している