宇宙技術開発株式会社

宇宙からの通信技術に懸ける

※ 2021年改定予定です

衛星TVの普及

日本では衛星放送開始後、30年以上(1986年12月 BS放送開始)が経過し、衛星を中継したテレビ放送はすっかり普及した感があります。また、日本では設備さえあればどこでも放送が受信できるという状態にあります。近年は4K/8K放送など大容量が必要なものまで出てきています。

衛星によるTV放送の開始により、広い地域で沢山の番組を視聴できるようになりました。衛星放送は概して高い周波数域を利用しており、多くの情報を取り扱うことができるため、地域で視聴できるチャンネル数が格段に増えました。またデジタル化技術の普及により、地上側も多くの放送を簡単に映像化することができるようになっています。ただし、衛星が高波長域を利用しているため、天候(雨や雪)により受信状態が悪くなるという問題もあります。

衛星放送では、多くの番組を主局(管制局)がコントロールし、衛星を中継して各地に電波を送ることで成り立っています。一頃はテレビ放送用のアンテナを個人宅に設置して受信する方が主流でしたが、近年のトレンドとしては、衛星放送と提携しているケーブルテレビ局に加入して視聴したり、衛星放送のネットワーク局と直接繋いで視聴したりする方法が取られるようになりました。ただこの方式は地上ネットワークの設置が容易な地域に限られますから、海上や山岳域ではあまり効率的とはいえません。移動体通信の普及に伴い、無線設備も駆使した設備が増え、この状況も変貌してきました。

通信波長
通信波長

さて、放送の話に戻ると、2012年3月31日より、地上波の放送についてはVHF帯を使うアナログ方式を全て終了し、UHF帯のデジタル方式へと移行しています。国際的にもアナログの停波が進み、デジタル放送へとシフトしました。地上および衛星における通信方式の標準化や規格については、ここでは触れませんが、国際的な情報交換と協議が多く持たれており、大きく変化を遂げています。

移動体通信の普及

携帯電話やスマートフォンなどの移動体通信に使われるマイクロ波は、高い周波数でより多くの情報を載せることができるという利点があります。昔は軍用や宇宙通信でのみ利用された帯域ですが、データ量・利用数共に需要が増え、こうした移動体通信やオフィス内の無線、インターネット中継用の帯域など、限定を加えた利用が進みました。このような用途ができたことで、電子機器も互いの干渉を避けるような設計規格がとられるようになりました。

日本の携帯電話・移動体通信は、直進性(指向性)が強く、利用者のアンテナや設備を小型にできたことを背景に、2000年代になって爆発的に普及しました。移動体通信では取り扱いデータ量が増え、データ転送方式を規定することでTV放送受信・データ伝送などが可能な便利な時代となりました。

衛星通信における携帯電話などの移動体通信機器についても、機器の小型化・高機能化が進んでいます。必ずと言っていいほど船に衛星通信用アンテナを装備しているなど、現在では、コストはやや高めながらも、電話、FAX、インターネットがごく普通に利用できるようになっています。

4G(第4世代移動通信システム)の高速通信サービスの時代は、ニュースや映画番組のようなメディア配信から、ゲーム、物販ネットワークサービス、電子決済まで、利用がスムーズに行われてきています。5G(第5世代移動通信システム)では、多数のものが同時にネットワークに繋がる「多数接続通信」、遠隔地でもロボット等の操作をスムーズに行える「超低遅延通信」の時代がやってきます。衛星通信システムで5Gをかなえるのは容易ではありませんが、低軌道の多数の衛星を利用したシステムを使うことで、現実となってきました。

衛星通信の普及

2000年代はまだ、衛星通信にかかるコストが高く、ユーザによる利用の日本の経済市場も小さいことから、衛星通信は地上通信が不通になった際や、緊急通信の必要性から存在している「冗長系回線」と考えられていました。しかしその後、設備の小型軽量化と共に紛争地域や、通信需要が増した発展途上地域を中心に広がり、世界的な普及が始まりました。衛星放送の場合、ユーザは受信するデータが大きければ事足りるのですが、発信するデータの要求が大きくなるという、社会的な需要が普及を後押ししています。

国土の広い米国や、国をまたいだ通信が必要な欧州なども、早くから衛星を活用した通信の重要性が認識されています。

日本上空の通信・放送衛星

日本でも、非常に険しい山間部や離島、海上などの需要が高まっています。また、東日本大震災をはじめとする災害時の通信確保という課題解決のため、衛星通信の重要性が見直されてきています。

ユーザ側は、地上であっても衛星であっても、安定してどこにいても通信できる環境が最適ですが、そのためには衛星通信に係る課題があります。第5世代通信を見据えて、衛星通信も、回線確保と時間の遅れのない通信を目指しています。

これからの衛星通信

さて、通信衛星のカテゴリーとして、静止気象観測衛星のように高度約36,000kmの静止軌道上にあり、広い地域にサービスを行うものと、数百kmから千数百km程度の中・低軌道で地球を周回しながら、複数の衛星で広い地域をカバーするものの、2つに分類することができます。

具体的な通信衛星を挙げると、BS、CSなどの固定地域放送へのサービスから始まったJCSATSuperBirdなどの衛星から、N-Star(エヌ・スター)や海上通信や移動通信のInmarsat(インマルサット)Intelsat(インテルサット)、多くの衛星で全世界をカバーするIridium(イリジウム)やGlobalstar(グローバルスター)まで、様々な衛星があります。

日本上空の通信・放送衛星例
日本上空の通信・放送衛星例
周回衛星システムの例

中・低軌道の複数の衛星を使うシステムのメリットは、通信遅れを減らせることです。静止軌道で往復約144,000kmの通信のためだけに約0.48秒の遅れが生じますが、この遅れが10分の1から100分の1となれば、より自然に近い通信ができることになります。

デメリットは、低高度になるほど、カバー域を大きくするためにより多くの衛星を必要とすることです。衛星の打ち上げや地球局設備導入・運営に莫大な費用がかかり、過去には事業のシステム構築の前に中断した例もあります。

通信に携わる方には今更なのですが、小型のVSAT(超小型地球局)、特にかつてはとても大きかったKa帯を使う宇宙通信機器も、小型化されてきました。スーツケースにおさまりアンテナを広げると通信できるものなど、ひと昔前はスパイ映画にしか登場しなかった設備が実用化され、容易に手に入る世界になってきました。2000年~2010年代にわたり、受信のみでなく、大容量の送信ができる小型地球局が開発されてきました。

現在では、静止軌道衛星のみの時代は大きくシフトし、地球全体をシームレスにつなぐために、多くの中・低軌道衛星を併用する時代が展開されてきています。以前には技術的課題だけでなく価格的にも難しかったことを、小型地球局が実現したこと、衛星通信を使う設備が小型・低コスト化したことを背景に、採算性が良くなり、普及・成長しています。

左右にスクロールしてご覧ください。

周回衛星を複数、低軌道衛星を多数使うサービス

計画名

計画概要

計画打ち上げ個数

ICO(Inmarsat-P:インマルサット-P)システム

高度約10,355km、軌道傾斜角45度の2つの軌道面に、各5機の衛星、及び予備各1機を配置。世界中に配置された12の基地局を使い、24時間地球のどこからでも通信可能というもの。
しかし、2019年現在は、インマルサットは静止軌道のサービスのまま船舶などへの提供サービスを続け、Ka帯を使ったインマルサット Global Xpressサービス(L帯+Ka帯)が開始している。

12機(構想のまま)

Iriduim(イリジウム)システム

高度約780kmの6つの極軌道面(軌道傾斜角86度)に各11機配置された衛星は、前後左右の衛星と衛星間リンクを通じて通信。2017年から次世代のイリジウム・ネクストシリーズが打ち上げられ、2019年1月に75機全てが打ち上げられた。置き換えが進められ、サービス開始となる。

66機(+9機は軌道上予備機)

Odyssey(オデッセイ)システム

高度約10,370km、軌道傾斜角56度の3つの円軌道面に、各4機の衛星を配置。2000年代にはこの名は消えている。

12機

Globalstar(グローバルスター)システム

高度約1,414km、軌道傾斜角52度の8つの軌道面に、各6つの衛星、及び予備各1機を配置し、世界主要9地域をカバーする構想で開始された。第二世代システムは、8つの軌道面に各4機の合計32機で、サービスが継続されている。1,600MHz帯/2,400MHz帯でCDMA方式。

32機

Orbcomm(オーブコム)システム

高度約785km、極軌道面に2機、軌道傾斜角45度の3つの軌道面には、各8機の衛星を配置し、全世界をカバーする移動帯通信サービスという構想で開始された。2014年6月に6機、2015年12月に11機、次世代のOG2衛星打ち上げが行われ次世代サービスが開始された。

17機

近年になって、多数のコンステレーション体制による通信が成功してくると、デジタルデバイド地域がシームレスにつながるということでなく、私たちは別なメリットに気づくことになります。ピンポイントに衛星がだめになった場合でも、通信能力が低くなるだけで完全にダウンしないということです。現在は宙域も視野にしたKa帯、V帯をメインとした通信コンステレーションが展開してきています。O3bや、OneWeb、他にもTelsat社やスペースX社、LeoSat社で中・低軌道の通信コンステレーションが計画・運用されています。

測位システムと通信の併用による利便性向上

こうした衛星のメリットを更に高めるのが、GPSやGLONASSなどの測位システムとの組み合わせです。測位による正確な時間と場所の提供は、その精度を高め、世界中のどこに居ても使えるようになることで、その価値を高めています。また、その場所で自由に通信サービスを使用できることにより、移動体通信の利用サービスの内容と価値を大幅に塗り替えます。

2000年代に入った頃、米国のGPSシステムを活用したカーナビゲーションなど、既に定着した技術もありましたが、そこからさらに、位置情報を携帯電話やスマートフォンなどの情報機器で利用するサービスの普及が爆発的に広まりました。今では、海外も含め多くの測位衛星が打ち上げられ、システムも実用として稼働してきました。日本でも2018年11月1日から正式にサービスが開始されました。

日本の測位システム衛星は、他の測位衛星よりやや高高度の軌道をとります。これは、日本で利用している米国のGPS衛星信号が、山あいなどで視野が遮られて、3機の測位信号を受信できない場合、より高い角度に見える衛星配置により電波を受信し、より正確に場所が特定できるようになっています。つまり、日本付近の上空を手厚くサービスできる内容となっているのです。

さて、その測位衛星システムは、日本では「準天頂衛星(QZSS)みちびき」ですが、米国では「GPS」、ロシアでは「グローナス/GLONASS」、欧州では「ガリレオ/Galileo」、中国では「北斗/Beidou」、インドでは「IRNSS」として、複数の衛星が打ち上げられています。全球測位衛星システム(GNSS: Global Navigation Satellite System)と総称され、現在ではサービスの互換性を高めるため、国際的な枠組みで情報交換が行われています。

具体的には、早期から米国GPSとロシアが共同して International GNSS Service(IGS)ネットワークが立ち上げられ、現在では、様々な測位機器を並行して開発するための規格や情報交換ができる仕組みもできています。国連の世界測位衛星システム国際委員会(International Committee on Global Navigation Satellite Systems :ICG) のウェブサイトで資料を見ることができます。

欧州のGalileoシステムの例

欧州のGalileoシステムの場合は、試験衛星初号機のGIOVE-Aが2005年、2号機のGIOVE-Bが2008年4月に打ち上げられ、その後、2011年10月に実証衛星のIOV-1, IOV-2が打ち上げられました。

各システムの稼働中の機体と、測位に利用できる信号について、内閣府の「みちびき」ウェブサイトにまとめられていますので、ご参照ください。

参考サイト

主な測位システム