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ロケット、衛星、情報通信、宇宙ステーション、射場まで。システム開発も含めた運用のエキスパート。

世界の輸送システム(ロケット等)事情

※ 2019年改定予定です

はじめに

これをご覧いただいている方の中には、「輸送システム」という言葉に、馴染みの薄い方もおいでかもしれません。宇宙業界でも使われ方は様々ですが、地上から衛星などのペイロードを打ち上げるロケットなど宇宙への打ち上げ・輸送を行うシステム全般のことを「輸送システム」と使うことが多いようです。

世界各国には、無重量状態などの試験のための小型ロケット、未来型の宇宙往還機、探査のための飛行機など、研究中のものも含めて大小様々な「輸送システム」が存在します。更に今は使われていなくなったものの中にも、興味惹かれるものが沢山あります。

輸送システムの業界は、ポスト冷戦時代に大きく様変わりし、他国のペイロード(衛星など)を「如何に確実に」、「安く」打ち上げるか、更には民間企業も参入して、より安く打ち上げるサービスが始まり、競争時代へと突入しています。ロシアや中国も新規参入し、商業衛星を如何にコストを下げて打ち上げるかについてしのぎを削る一方、自国の確実なシステム開発・維持をしていく重要性も指摘されています。

ここでは、現在打ち上げに利用しているロケットを中心に、ごく一部に焦点を絞って紹介いたします。
なお、2014年時点のトレンドとしては、以下のような特徴があります。

米国の輸送システム

delta4 射場より

米国のロケットの代表格であるデルタロケットとアトラスロケットは、弾道ミサイルとして開発されたものが1950年代後半に衛星打ち上げ用に転用され、打上げ能力の向上が図られてきました。現在では、大型の静止衛星や地球観測衛星、深宇宙探査機を打ち上げるための大型のロケットとして、「デルタ4(Delta-IV)」及び「アトラス5(Atlas-V)」が利用されています。

現在のデルタシリーズは「ボーイング社」、アトラスシリーズは「ロッキード・マーティン社」が元請業者になっており、両社は、「United Launch Alliance (ULA)」という合弁会社を作って商業打ち上げを行っています。

「デルタ4」の標準型は静止遷移軌道に4.2トンのペイロードを、Heavy型では同13トンを、「アトラス5」は、同4トンから8トンのペイロードを打ち上げる能力を持っています。いずれも2段式のロケットで、メインとなる1, 2段のロケットの推進剤には液体燃料を使っています。アトラスVロケットの1段エンジンには非常に高性能なロシア製のRD-180エンジンが使われているため、2014年に起きたロシアのウクライナ侵攻問題を受けて、米露の間でもこのエンジンを巡る駆け引きが起きており、新たな米国製エンジン開発の動きも出ています。

一方で、地球観測や大気観測の衛星などに使う低軌道の打ち上げや、それほど重量のない探査・観測衛星などを打ち上げには、中・小型ロケットもよく利用されています。それらは、「デルタ2(Delta-II)」や「アテナ(Athena)」、「トーラス(Taurus)」、「ミノタウロス(Minotaur)」、空中発射式の「ペガサス(Pegasus)」などです。これらは2000年代後半から打上げ頻度が低下しており、打上げニーズが少ないものは退役の方向にあります。

デルタシリーズとして活躍した中型ロケットの「デルタ2」ロケットは、NOAAなどの気象観測衛星やGPS衛星各機、AquaやAuraなどの地球観測衛星など、重要なペイロードを多数打ち上げており、実績あるロケットとして知られていますが、すでに製造を終了し、2010年代半ばには在庫分を使い切って退役する予定となっています。

「アテナ」や「トーラス」は、「ロッキード・マーティン社」や、「オービタルサイエンス(OSC)社」が打ち上げる小型ロケットです。この中で最も小型のペイロードの打ち上げ能力である空中発射式の「ペガサスXL」は、様々な場所から発射することができる機動性をそなえ、地球の低軌道に打ち上げる様々な種類の衛星に柔軟に適応できるロケットですが、2014年現在、ユーザ不足のため、将来の見通しは不透明となっています。代わりに、2011年に設立されたストラトローンチ・システムズ社がサンダーボルトというより大型の空中発射式ロケットをOSC社と共同で開発中です。初打上げの目標は2018年で、低軌道へ4,500kgの打上げを目指しています。

忘れてはならない宇宙の輸送システムは、「スペースシャトル」です。1981年4月12日に1号機が打ち上げられて以来、1986年1月28日にはチャレンジャー(STS-51L)号の事故、2003年2月1日のコロンビア(STS-107)号の事故などで打ち上げ中断の困難に直面しましたが、その後もペイロードだけでなく、宇宙飛行士を運ぶための宇宙輸送機の要となってきました。打上げ能力は、オービタとペイロードを含めて約120トンを宇宙へ運んでいました。軌道にもよりますが、ペイロードのみだと約15トンの打上げ能力がありました。

残念ながら、2011年7月のSTS-135ミッションをもって、スペースシャトルはその役割を終えました。現在、スペースシャトルは、エンタープライズ号(滑空試験機)はスミソニアン博物館からニューヨークのイントレピッド海洋・航空宇宙博物館に移され、ディスカバリー号はスミソニアン博物館の別館ウドヴァーヘイジーセンターに、エンデバー号はロサンゼルスのカリフォルニア科学センターに、アトランティス号はケネディ宇宙センターのビジターセンターに展示されています。

sts-135

NASAの次世代有人打上げロケットについてはシャトル退役前に提案されていたアレスロケットがキャンセルされるなど2転3転しましたが、2011年にSLS(Space Launch System)開発計画が発表され、有人打上げ型と重量物打上げ型(あるいは初期型、後期型)の2つのタイプが開発されることになっています。有人打上げ型は、カプセル型のオリオン(Multi-Purpose Crew Vehicle: MPCV)宇宙船の打上げに使われるロケットで、重量物打上げ型はそれをベースに打ち上げ能力を強化したもので、いずれのタイプでも使われる固体ロケットブースタとメインエンジンはシャトル計画で使っていたものを改良したものを使います。

有人打上げ型のロケットは2018年11月に最初の無人飛行試験機EM-1(Exploration Mission 1)の打ち上げを予定しており、有人飛行のEM-2(Exploration Mission -2)は2021年になると考えられています。全長は97m、低軌道に70トンの打ち上げ能力があります。オリオンMPCVは、低周回軌道へのミッションであれば最大6人が搭乗可能な機体設計ですが、現時点では最大4人乗りで使うことが考えられています。

重量物打上げ型ロケットは、全長115mで、低軌道へは130トンもの打ち上げ能力を持ちます。初打上げは2025年頃になる予定です。このロケットの上段ロケットには「J-2X」エンジンとJ-2Xに供給する液体燃料(液体水素と液体酸素)タンクを搭載する予定です。「J-2X」エンジンは、アポロ時代に使われたJ-2エンジンと、J-2エンジンを簡素化し1970年代初期に開発試験されたものの使われることのなかったJ-2Sエンジンをベースに改良した効率の高いエンジンです(注:2014年現在、火星へは行かないのであれば月ミッション用に打上げ能力を105トンに落として、J-2Xではなく既存のエンジンの改良型であるRL-10Cを使う計画が出ています)。

また、商用機の開発も行われ、2012年2012年5月22日にスペースX(Space Exploration Technologies)社の無人補給機ドラゴン(Dragon)の試験機がファルコン9(Falcon9)ロケットで初打ち上げ成功し、商業打ち上げの幕を開けました。次いで、2013年9月18日オービタル社のシグナス(Cygnus)試験機がアンタレス(Antares)ロケットで打ち上げ成功。また、有人用のカプセル型輸送についても、スペースX社の有人型ドラゴン(Dragon V2)と、 ボーイング社のCrew Space Transportation(CST)-100の開発が進められています。シアラ・ネバタ・コーポレーションも有人打ち上げが可能な小型有翼機ドリーム・チェイサー(Dream Chaser)の開発を進めていますが、こちらはNASAの選定から漏れてしまいました。ドリーム・チェイサーとCST-100は有人対応型のアトラスVロケットを使って打ち上げられる予定です。

ファルコン9ロケットは、2013年9月に改良型のファルコン9 v1.1がデビューし、ロケットの1段を回収して再利用するために、着陸脚4本を装備して着陸実験が精力的に行われています。もし回収に成功して、再利用が可能となれば、打ち上げ費用を大きく削減できるようになる可能性があるため、他社は同社の動向を非常に気にしています。2015年には現役のロケットとしては最も打上げ能力が高くなるファルコンヘビー(Falcon Heavy)ロケットがデビューする予定です。このロケットは、静止遷移軌道へ21.2トンもの打上げ能力を持ちます。また、ファルコン9 v1.1と同様に1段とブースター2本には着陸脚を装備して、将来的には回収を行う計画です。なお、着陸脚を装備せずに打上げる場合は、打上げ能力をさらに高めることが可能です。

米国の宇宙機関のロケット打ち上げ基地といえば、最も有名なのはフロリダ州のNASAケネディ宇宙センター(KSC)です。スペースシャトルも、ここから打ち上げられました。その他、ケネディ宇宙センターに隣接しているケープカナベラル空軍基地や、西海岸ではカリフォルニア州のヴァンバーグ空軍基地の射場が利用されています。また、バージニア州東海岸にあるワロップス島にあるワロップス試験発射場での打ち上げも増えていましたが、2014年10月29日のアンタレスロケット打ち上げ失敗のため、補修も含め計画の見直しがされるようです。

<参考サイト>

欧州の輸送システム

ヨーロッパの宇宙輸送システムの代表格は、アリアンスペース社の「アリアンロケット」でしょう。南米ギアナにある欧州宇宙機関(ESA)のクールー基地からの打ち上げの報道イメージをよく目にするのではないでしょうか。

アリアンロケットは4型の静止遷移軌道への打ち上げ能力は最大約4.4トンでしたが、初期のアリアン5型(Ariane 5 Generic)で静止遷移軌道に6トン、2005年から導入された改良型のアリアン5 ECAでは静止遷移軌道に10トンの打ち上げ能力を持っています。アリアン5では商業衛星2機を同時に打上げることで打ち上げ費用を安価にする手法で、世界中の商業打ち上げのほとんどをアリアンスペース社が受注していましたが、市場環境の変化が訪れているため次世代型のアリアン6型(Arian 6)ロケットの開発が始まりました(アリアン6については後述)。

なお、アリアン5とアリアン6の間をつなぐロケットとしてアリアン5 ECAの改良型となるアリアン5 ME(Midlife Evolution)の開発も検討されており、静止遷移軌道への打ち上げ能力は11.1トンとなる予定です(ただしアリアン6の開発着手が認められた場合は、MEの開発はキャンセルされる予定です)。

Arianv

ヨーロッパの宇宙輸送システムの代表格は、アリアンスペース社の「アリアンロケット」でしょう。南米ギアナにある欧州宇宙機関(ESA)のクールー基地からの打ち上げの報道イメージをよく目にするのではないでしょうか。

ロケットの打ち上げ能力は、よく、赤道上空の地上約3万6千kmの静止軌道に移行できる静止遷移軌道(GTO)へ、どれだけの重量を打ち上げられるかということにより比較されます。静止軌道には気象衛星や通信衛星の需要が多く、中軌道(約数百km~数千km)や低軌道(約~数百kmまで)の需要には、測位衛星、イリジウム衛星などで知られる小容量通信衛星、地球観測衛星、偵察衛星といったものがあります。

地球を回る時の角度や方向も含め、最終的にペイロードがどういった軌道をとりたいか、それを可能とする能力が輸送システム(現在は主にロケット)に求められます。最近では、地球観測衛星やGPSなどの測地衛星、通信衛星に関する低~中軌道の需要も数多く有ります。

アリアンスペース社は、アリアンロケットよりも小型のペイロードの打ち上げには、「ベガ(Vega)」ロケットを使用しています。「ベガ」は4段式の固体ロケットです。軌道傾斜角90度、700kmの円軌道に1500kgのペイロードを打ち上げる能力があり、1998年より開発プログラムが立ち上げられ、2013年2月13日に南米ギアナにあるクールー宇宙基地から1号機が打ち上げられました。また、中型のロケットとしてはロシアのソユーズSTロケットをクールー基地から打上げており、2011年10月に初打上げを成功させています。ソユーズSTロケットは、ソユーズ-2.1a、2.1bロケットを熱帯地域からも打ち上げられるようクールー基地に合わせた仕様に若干改修を加えたものです。

アリアン6は、2014年にコンセプトが見直しされ、大型ロケット用のアリアン64(A64)と中型ロケット用のアリアン62(A62)の2機種が開発されて、アリアン5とソユーズSTロケットと置き換えられる計画になりました。アリアン64と62はSRBの本数を4本か2本に変えることで打上げ能力を変える計画です。アリアン64は静止遷移軌道への打上げ能力が最大6.5トン(A62は3.5-5トン)で、2020年の初打上げを目指します。2014年12月のESAの閣僚会議で、アリアン5MEとどちらの開発を選ぶか決断される予定です。

<参考記事サイト>

<参考サイト>

ロシアの輸送システム

ロシアの大型ロケットの代表格は、ソユーズ(Soyuz)とプロトン(Proton)ロケットでしょう。
ソユーズというと、やはり宇宙飛行士及び月への計画を競いアポロとしのぎを削ったイメージをお持ちの方も多いかもしれません。元々は大陸間弾道ミサイルとして開発が進められたR-7ロケットをベースに開発されたものです。

旧ソビエト連邦における共産主義体制の崩壊以降、1996年には、ヨーロッパ系のロシアの会社としてStarsem社が設立され、ソユーズロケットでの打ち上げに関する商業利用も開始されました。(株式は、Airbus Defence and Space 社(旧EADS社)が35%、アリアンスペース社が15%、ロシア連邦宇宙局(Roscosmos)が25%、このソユーズを製造しているSamara Space Center (TsSKB-Progress)が25%とのこと)

「ソユーズ-U」ロケットは、非常に多く打ち上げられており、国際宇宙ステーションへのプログレス補給船の打ち上げにも使われています。(カザフスタンのバイコヌール基地からの打ち上げ)

現在では宇宙飛行士などの打ち上げには、「ソユーズ-U(Soyuz-U)」ロケットではなく「ソユーズ-FG(Soyuz-FG)」ロケットが使われており、民間の人工衛星打ち上げ用には打ち上げ能力などを改良したソユーズ2ロケット(静止遷移軌道に2.7-3.6トンの打ち上げ能力)が使われています。ソユーズUとFGはウクライナから輸入した部品を使うことから近いうちに廃止され、ロシア製の部品に置き換えるなど能力も向上させたソユーズ2(2.1aと2.1b)へ完全に移行する予定です。2013年末には同じソユーズという名称ですが、機体構造やエンジンを大きく見直した新型の小型ロケットソユーズ2.1vロケットがデビューしました。これに液体ブースターを装着すれば、中型ロケットもカバーできるようになります。

打ち上げ能力に優れたプロトンシリーズのロケットも、元は弾道ミサイルなどの軍事目的に開発されたロケットです。プロトンK(Proton-K)ロケットは、低軌道の打ち上げの場合の3段式、静止軌道までの打ち上げができる4段式の構成をとることができます。4段式では静止遷移軌道に4.8トンまでのペイロードを打ち上げることができました。

プロトンM(Proton-M)は、2001年から導入されたプロトン-Kの改良型であり、ペイロードを入れる先端部(フェアリング)の容積も大きく静止遷移軌道に5.5トンもの衛星を投入できます。2012年3月20日に最後のプロトンKロケットの打ち上げが行われ、それ以降、プロトンMへ切り替えられました。この切り替えはウクライナ製の機器への依存を下げる目的もありました。プロトンMも年々改良が行われており、2009年2月にデビューしたフェーズIIIでは打上げ能力が1,150kg向上し、静止遷移軌道に6.1トンの打上げが可能になっています。さらには2015年に投入が予定されているフェーズIVでは6.3トンにまでさらに能力が向上します。しかし、2010年から毎年1機は打上げに失敗するようになっており、ロシアの品質管理の問題が浮き彫りになったため、将来性が少し不透明になっています。また、推進薬に有害な燃料を使っている点でも環境に悪影響を与えるとしてカザフスタンから懸念されており、いずれは新型のアンガラロケットに切り替わることになるでしょう。

中型のロケットである、コスモス-3M(日本ではCosmos-3Mと使うことが多いが、海外ではKosmos-3Mと書かれることが多い。)も最初は中距離ミサイルとして開発されたものを改良したものです。高度1700kmの軌道に1500kgのペイロードを打ち上げることができました。打ち上げは、ロシアのプレセツク基地から行われていました。なお、コスモス3Mは2013年に退役しました。

「ロコット(Rockot)」は、大陸間弾道ミサイルを衛星打ち上げ用に転用した3段式ロケットで、Eurockot 社(Airbus Defence and Space 社(旧EADS Astrium)が51%、Khrunichevが51%のドイツ・ロシア間のパートナーシップ)によって商業打ち上げが行われており、200kmの高度に1900kgのペイロードの打ち上げ能力があります。2014年8月に報道された情報では、ロコットは2016年にはロシア軍が利用を止める方針のため、今後が不透明となっています。

ロシアでは現在、プロトン、ロコット、ゼニットロケットなどを代替する新型ロケットとしてアンガラロケットが開発されており、2014年末には初飛行する計画です。プロトン、ロコットロケットのように有害な推進薬を使用せず、液体酸素とケロシンを使用するロケットのため、環境汚染も軽減されるほか、モジュラー構成の設計のため、小型ロケット、中型ロケット、大型ロケットの全てをカバーできるようになる計画です。小型のアンガラ1.2は低軌道に3.8トン、中型のアンガラA3(検討中)は低軌道に14.6トン、大型のアンガラA5は24.5トン、(まだ構想段階ですが)重量級のアンガラA7では36トンの打上げ能力となります。

さらには、2020年までには120-150トンクラスの打上げ能力を持つ新たな超重量物運搬ロケットの開発に着手する予定という情報も2014年9月に出てきています。

ロシアはこれまで、バイコヌール宇宙基地(カザフスタン共和国)とプレセツク宇宙基地を主に使っていましたが、現在、極東に新しいボストチヌイ宇宙基地を建設中で、2015年に初打上げが計画されています。完成は2018年の予定で、バイコヌール宇宙基地で行われていた有人打上げもこちらへ移される計画になっています。

<参考サイト>

ウクライナの輸送システム

旧ソビエト連邦の崩壊以来、元々は旧ソビエト連邦の中でも工業にも農業でも豊かな地域であったウクライナですが、原発事故処理をはじめ多くの経済危機状況を抱え、地場産業を何とか活かそうという取り組みがなされてきました。

ウクライナの宇宙産業に目が向けられたのもそんな土壌があったからかと思われます。日本では一部で、シーロンチ(SeaLaunch)の名で有名となっていますが、「ゼニット(Zenit-3SL)」ロケットという大型ロケットがあります。バイコヌール基地からと海上の移動式プラットフォーム基地の双方から打ち上げが利用できる非常に利便性の高い上に、静止遷移軌道上に6.1トン(初期の5トンから能力を向上)ものペイロードを打ち上げる能力が高く評価されていましたが、2回にわたる打ち上げ失敗と2014年に起きたウクライナ危機の影響を受けて2016年まで打上げ予定がない状態となっており、今後が見通せない状況となっています。サービスは、ロシアのエネルギア社やボーイング社、ノルウェーの企業が設立した合弁企業シーロンチ社が実施しています。

また、ウクライナのロケットとしては、「ドニエプル(Dnepr)ロケット」も有名です。ドニエプルロケットも弾道ミサイルとして開発された機体を打ち上げ用ロケットに転用したものですが、現在は1997年に設立されたコスモトラス(Kosmotras)社によって商業打ち上げが行われており、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地とロシアのヤースヌイ宇宙基地の地下サイロから打ち上げられています。2005年8月23日にはJAXAの光衛星間通信実験衛星「きらり」(OICETS:約570kg)がドニエプルロケットで高度610kmに打ち上げられています。ドニエプルロケットは2013年11月には合計32機の衛星打ち上げに成功し、2014年6月にも合計37機(ロケットから直接放出した数は33機)の打上げを行っており、日本のWINISAT-1、ほどよし3号、4号の打ち上げに使われるなど、日本とも関係の深いロケットです。2014年秋には、ASNARO-1と、ほどよし1号、ChubuSat-1、TSUBAME、QSAT-EOSの5機の打上げも行われる予定です。

その他、ソ連とウクライナで開発したサイクロン3ロケットを近代化改良したサイクロン4(Cyclone-4)ロケットが開発されており、ブラジルのアルカンタラ射点から打上げを行う予定ですが、初打ち上げは何度も延期されており、現在は2015年末の打上げ予定となっています。高度200kmの軌道に5685kgの打上げ能力を有します。

<参考サイト>

中国の輸送システム

中国は、大型ロケットとして「長征」を開発し、自国の通信衛星や測位衛星などを始め多くの衛星を打ち上げています。現在では長征(CZ)4B、4C、長征3A、3B、3C、長征2C、2D、2Fロケットが利用されていますが、「長征2F(CZ-2F)」ロケットは2003年10月15日には有人宇宙船「神舟(シェンチョウ)5号」打ち上げ成功を収め、ロシア、米国に次ぎ3番目に宇宙へ有人飛行を成功させたことで話題になりました。長征を利用した将来計画には、独自の有人の宇宙ステーション計画や月探査までが発表されています。

中国の打ち上げ基地には、甘粛省の酒泉(チウチュワン)、四川省の西昌(シーチャン)、山西省の太原(タイユワン)、4か所目となる海南島の文昌に、大型の長征5号の打上げが可能な新しい打ち上げ基地を整備中です(2014年秋に完成し、2015年から使用を開始予定)。

西昌宇宙センターは酒泉や太原より低緯度にあるため静止軌道への打ち上げ用の長征3シリーズの打ち上げに利用、有人宇宙船「神舟(シェンチョウ)」は、甘粛省の酒泉(チウチュワン)から打ち上げられています。

現在、環境負荷が低い液体酸素とケロシンを使う次世代機の長征5号、6号、7号の開発が行われています。長征5号は、有人打上げにも使える大型ロケットで、低軌道に25トン、静止遷移軌道へ14トンの打ち上げ能力を有します。小型ロケットの長征6号と中型ロケットの長征7号も並行して開発が進められています。

<参考サイト>

インドの輸送システム

インドは、PSLVとGSLVという2つのロケットを現在有しています。PSLV(Polar Satellite Launch Vehicle)は極軌道衛星打ち上げ用に開発された小型ロケットで、2段と4段の液体ロケット以外は固体ロケットを使用しています。1993年から使用を開始しており、6本のSRBを装着しないPSLV-CA(Core Alone)型と、打上げ能力を強化するためにSRBの推進薬を増やしたPSLV-XL型も使われています。PSLVは低周回軌道への打上げだけでなく、静止遷移軌道への打上げの使われたこともありますし、月探査衛星チャンドラヤーン-1の打上げなどにも使われています。またインド宇宙機関(ISRO)の商業部門であるAntrix社により商業打ち上げも行われています。PSLV-CAの低周回軌道への打上げ能力は約1,000kg、PSLVは1,600kg、PSLV-XLは1,750kgあります。

GSLV(Geosynchronous Satellite Launch Vehicle)は、静止衛星の打上げ用として2001年に開発されたロケットですが、打上げ失敗が多く、あまり成功したロケットとは言えません。GSLV Mark-Iは、ロシア製の極低温エンジンを3段に使用したタイプで、GSLV Mark-IIは、その3段の極低温エンジンを国産化したタイプです。静止遷移軌道へ2から2.5トンの打上げ能力を有しています。

GSLV Mark-IIIは同じGSLVの名前ですが、固体ロケットブースターと、1段、2段を大型化した全く別物の新型ロケットで、静止遷移軌道への打上げ能力を4トンまで強化しており、日本のH-IIAに匹敵するロケットになります。初打ち上げ(弾道飛行)は2014年11月に行われる予定です。

<参考サイト>

日本の輸送システム

日本のロケットに関しては、JAXAのホームページや書籍でたくさん紹介されていますので、ここでは詳細を省き、ざっと概要を記述してみます。

戦後、航空機及びロケットに関する研究や開発が禁止され、事実上ゼロからの出発となった日本の航空宇宙産業ですが、平和目的の利用のために軍事とは切り離され再開されることになりました。世界の基準に追いつき、且つ、純国産の目標を掲げて開発を進め、現在の大型ロケット「H-IIA」「H-IIB」があります。

「H-IIA」は2段式のロケットで、静止遷移軌道に4トンのペイロードを打ち上げる能力があります。補助ブースターには固体燃料を使っていますが、2段とも液体の推進剤を使っています。打ち上げは、鹿児島県種子島の種子島宇宙センターから行われます。「H-IIA」の打ち上げは2003年の6号機で失敗も経験しましたが、それ以降は成功をおさめています。

M-V

また、H-IIAの打ち上げ能力を増強した「H-IIB」ロケットは、H-IIAと同じく液体酸素と液体水素を推進薬とする2段式ロケットで、本体横にポリブタジエン系推進薬を使い、加速を補助する固体ロケットブースター(SRB-A)を装着しています。H-IIAから増強された部分は、1基だった第1段液体ロケットエンジン(LE-7A)を2基装備すると共に1段の直径を4mから5mに拡大し、H-IIAの標準型では、2本だったSRB-Aを4本装備していることです。H-IIBの1号機は、2009年9月11日に国際宇宙ステーションへの無人補給機HTV1を打ち上げ、以降もHTV「こうのとり」の打ち上げに使われています。H-IIAロケットは商業打上げの競争力を確保するための改良(高度化)も2015年末を目標に進められており、さらに、2021年の打上げを目指して次期基幹ロケットの開発も始まりました。

中型の打ち上げロケットとしては、3段式の固体推進剤を使った「M-V(ミュー・ファイブ)」ロケットが活躍してきました。M-Vロケットは、低軌道に1800kgのペイロードを打ち上げる能力があり、主に科学探査衛星を鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げていましたが、2006年の7号機を最後に退役しました。現在は後継機のイプシロンロケット開発が行われており、2013年9月14日に初打ち上げが行われました。イプシロンロケットは、H-IIAロケット補助ブースターを1段目に、2, 3段目にはM-Vロケット上段モータを使うという仕様で進められました。イプシロンロケットの打上げ能力は1,200kgと下がりましたが、コストを大幅に削減し、地上管制設備の自動化を進めるなどして組み立てや運用の効率化を図るという新たな領域を切り拓いています。イプシロンロケットの開発はまだ続いており、コストのさらなる削減、打上げ能力の増強などが進められています。

JAXAではその他に、SS-520、S-520、S-320という固体推進剤を使った観測ロケットが継続して運用されています。

最後に、現在のIT社会ですから、ロケットのハードウェアが勝手に飛び回るわけではないのは誰もがおわかりだと思います。ロケットに関する打ち上げ基地では、打ち上げ前の試験から推進剤の注入、チェックを行う遠隔操作のためのロケット側の機能が作動しているかなど、本当に数多くのシステムサポートが実施されています。

打ち上げ後も、ロケットが安全な軌道をとっているか、衛星を正しい軌道に乗せたり、探査ミッションを正常な位置に配置するためなど、地上からのサポートが必要です。ロケット本体側の自律的な機能も多く組み込まれていますが、地上の設備ではそれらを刻々とモニターしたり時には指示を加えたりするわけです。どのようなシステムを構築しているかは、各国・各企業により大きく異なると思われます。

<参考サイト>

大型ロケットの性能比較

ロケット名 デルタ4
Delta-IV
アトラス5
Atlas-V
アリアン5
Ariane 5
プロトンProton-M
ゼニット
Zenit-3SL
長征
CZ-2F
ファルコン 9
Falcon9
H-IIA
米国 米国 欧州 ロシア ウクライナ 中国 米国 日本
静止遷移軌道(GTO)への打ち上げ重量 4.2トン
(midium)
13トン
(Heavy)
3.7-8.9トン 6.0トン(5G)
10トン
(5ECA)
5.5トン 6.1トン 3.5トン 4.8トン
(v1.1脚付き)
21.2トン
(Falcon Heavy)
4.0トン
(H2A 202)
6.0トン
(H2A 204)

中・小型ロケットなどの性能比較(1/2)

ロケット名 デルタ2
Delta-II
アテナ
Athena

トーラス
Taurus
ペガサスXL
Pegasus XL
ベガ
Vega
アンタレスAntares ミノタウロス
Minotaur
米国 米国 米国 米国 欧州 米国 米国
低軌道などへの打ち上げ重量 低軌道に
5.1トン程度
低軌道に
1900kg
(アテナ2)
低軌道に
1400kg程度
低軌道に
440kg程度
700km軌道に
1500kg程度
低軌道に6.1トン程度 低軌道に1730kg
(MinotaurIV,V,VI)

中・小型ロケットなどの性能比較(2/2)

ロケット名 ソユーズ
Soyuz
コスモス-3M
Cosmos-3M
ロコット
Rockot
ドニエプル
Donepr
イプシロンEpsilon ミューV型
M-V
ロシア ロシア(2013年廃止) ロシア ウクライナ 日本 日本
低軌道などへの打ち上げ重量 低軌道に
6.9トン
(ソユーズU, FG)
7-8トン
(ソユーズ2)
2.8トン
(ソユーズ2.1v)
1700km軌道に
1500kg程度
200km
軌道に
1900kg程度
低軌道に4.2トン 低軌道に1200kg(初号機) 低軌道に
1800kg程度

各国のサイトに記述がないものについては、以下ページの打ち上げ能力、及び、ロケットが打ち上げたペイロードなどを、参照、JAXA、NASA、ESAなどのぺージを確認させていただきました。
»JAXAの「JAXA長期ビジョン 参考資料集」(日本語)