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ベールを脱いだ木星の真実

※ 2019年改定予定です

火星より更に太陽系の外側には、小惑星帯があり、その更に外側を回るのが木星です。惑星まで距離は簡単に想像し難いものがありますが、そんな時の地球から太陽までの平均距離()である1天文単位(約15億km)という指標が使われます。

太陽からのおよその距離は、水星が0.387AU、金星が0.723AU、火星が1.524AU、木星は、5.203AU、土星が9.537AU、天王星が19.191AU、海王星が30.069AUとなっています。木星は遠いだけでなく、今まで紹介した水星・金星・火星とは異なるタイプの惑星です。木星の直径は実に地球の11倍以上、重力も2倍以上で、非常に強い磁場が存在し、探査船の観測成果としてオーロラも計測されています。

正確には、地球が太陽を回る時の楕円軌道の長半径

木星探査の距離イメージ
木星探査の距離

木星の月(衛星)はイオ、エウロペ、カリスト、ガニメデを筆頭に多く存在しており、周囲に小さな粒子が周回する輪が存在することもわかっています。

パイオニアとボイジャーミッションが明らかにした木星の素顔

木星では、これまで近くを訪れた探査機が、NASAの探査機パイオニア10号、11号(Pioneer-10,Pioneer-11)、ボイジャー1号、2号(Voyager-1,Voyager-2)、ガリレオ軌道周回船、探査機と、NASAとESAの共同ミッションである太陽観測衛星ユリシーズ(Ulysses)と土星探査機カッシーニ(Cassini)、そして冥王星探査機ニューホライズン(New Horisons)の9機と、まだ決して多くはありません。また、最初に接近撮影を果たしたパイオニア10号から、ボイジャー2号までの1970年代の木星探査ミッションは、画像が撮影される度に世界中のメディアで大きく取り上げられる華々しいものでした。しかし、その後は火星探査などと同様、接近探査が再開されるまで10年以上の空白期間が生じました。

1972年3月に打ち上げられたパイオニア10号では、1973年12月3日に、木星半径の約2.8倍にあたるおよそ木星上空約20万kmへの最接近を達成しました。初めて木星を真近に映像としてみることに成功した他、木星はガスと液体が支配的な環境であり、強い放射線帯や磁場が存在することを確認し、直接計測を成功させました。パイオニア11号は、10号に続いて1974年12月4日に木星最接近し、木星の放射線や磁場、オーロラ、電波などを観測し、巨大赤斑の撮影に成功しました。

そのほぼ5年後の1979年3月5日に、ボイジャー1号は木星に最接近し、約1万9000枚の写真を撮影しました。ボイジャー2号も続いて1979年の7月9日に木星に最接近、約1万8千枚の画像を撮影しています。その中で、特に注目を集めたのは、衛星イオの活動状態です。先にパイオニアが通過した後、衛星のイオの火山活動が変化していることを観測しました。木星の衛星イオの活動が木星の磁場に影響を与えていることが、ボイジャー1号と2号によって計測されました。

<参考サイト>

ガリレオの軌道周回船と探査機があきらかにした木星の真実

1977年にボイジャー1号と2号が打ち上げられたほぼ12年後の1989年10月18日に、ガリレオ(Galileo)が打ち上げられました。ガリレオは、軌道周回船ガリレオ・オービタ(Galileo Orbiter)と突入用の探査機ガリレオ・プルーブ(Galileo Probe)からなるミッションで、その後1995年7月13日に探査機が周回船から切り離され、その年の12月7日に探査機は木星への突入を行いました。

切り離された探査機は、木星の濃く高温で放射線も強い過酷な環境の中、パラシュートを開いてから57分間はデータを送ってきました。それらのデータは、木星が水素とヘリウムが主要要素のガス主体の星であり、非常に風が強いことなど多くの直接計測値を含んでいます。

軌道周回船は、木星を周回して初めて継続探査を行い、木星の上層大気や電離層、重力場や磁場、プラズマ、木星表面の鉱物組成などを計測し、最後は2003年9月21日に木星大気に突入して破壊されました。周回船が観測し見つけた木星の月は実に63個を数えました。

木星の主な4つの衛星についても接近探査が行われ、エウロペやガニメデ、カリストの地下に凍った塩水の存在の可能性があること、木星の重力が衛星イオに潮汐力を与えているために形がゆがめられ活発な火山活動の一因となっていることをつきとめました。データからは、イオに磁場が存在することや木星周辺のダストがイオの活動によるものらしいことがわかっています。

<参考サイト>

再び訪れたカッシーニがクローズアップした木星衛星・そして将来計画

ユリシーズは、1990年に打ち上げられた米国NASAと欧州ESAの共同ミッションです。特に太陽の北と南の極付近のデータ取得は、それまで極方向の軌道を飛行してデータ取得を行った衛星がなかったことから、他の太陽系の放射線環境データなどとともに貴重なデータとなっています。

ユリシーズは、黄道にそった軌道から、極方向の軌道へと軌道変更を行うために、木星の重力を利用しました。太陽系内の木星軌道までに達する楕円軌道をとり、太陽系の放射線環境を縦方向に移動し、太陽活動周期11年以上にわたる変遷を計測し、木星付近の放射線環境データも取得しました。最初の木星への接近は、先に打ち上げられたガリレオより早い1992年2月8日に行われました。極方向に太陽を2周回した後の2004年2月4日にまた木星に接近、2009年6月30日に10年間の運用を終えました。

1997年10月15日に打ち上げられたカッシーニは、土星の周回とタイタンの探査機を携えたミッションです。金星を1998年4月と1999年6月に通過し、1999年8月には地球、小惑星帯を1999年の12月から翌年4月にかけて通過し、2000年12月30日に木星に最接近しました。カッシーニはその後土星に向かい2004年6月に土星に到着しています。

木星については、チャンドラエックス線天文観測衛星やROSAT衛星による2002年3月に発表された観測結果でも、木星の極から発している強いエックス線について確認することができました。木星のオーロラだけでなく木星の衛星イオのオーロラの撮影に成功し、イオの火山ガスが毎秒1トンもの酸素や硫黄ガスを発し、それが、可視光では見えない木星の周りのドーナツ状のガスを構成することもつきとめました。また、周囲の放射線帯は以前計測されたより、ずっと厳しいものでした。

2009年7月には、小惑星と思われる衝突から、木星大気に斑点を作成する珍現象が起こり、地球周回軌道にあるチャンドラエックス線天文観測衛星とハッブル望遠鏡による同期観測などが行われました。同じような現象として、更に15年前の1994年の7月にも、シューメイカーレビー9彗星が、木星に衝撃を与えたことがあります。 2010年6月3日にも小惑星による衝撃が撮影されています。

さて、近年では2006年1月19日に打ち上げられ、冥王星を目指すNASAのニューホライズン(New Horizons)が、2007年2月から木星に接近しています。New Horizonsは、冥王星への旅に必要な速度を木星のスウィングバイによって得た時に、多くの新しい木星周辺の映像を取得したので、是非ご覧になることをお勧めいたします。その後、ニューホライズンは、旅を続けて土星及び天王星の軌道を通り、2015年7月14日に冥王星に最接近し、その月も含めた多くの画像やデータを取得しました。最接近後は冥王星外側の軌道に広がる小惑星帯「カイパーベルト」にある40-50kmの大きさのKBO(2014MU69)を目指しています。

NASAに於いては、将来ミッションとして、Jupiter Icy Moons Orbiter (JIMO) と木星極軌道を周回させるジュノーJuno(Unlocking Jupiter's Secrets)がNASAで提案されました。そのうちのジュノーは、日本時間の2011年8月6日(日本時間)に打ち上げられ、2回目の軌道変更マヌーバDSM-2を2012年9月14日に実施しました。ジュノーのその後の予定ですが、2013年10月9日に地球をスウィングバイし、2016年7月4日に木星に到達予定、8つの計測装置により木星の起源、構造、大気、磁気圏と固体核が存在するかどうかを探査することになっています。

また、ESAにおけるジュースJUICE(JUpiter ICy moons Explorer)は、ESAの2015年から2025年の科学探査計画である「コズミックビジョン2015-2025」に最初に選ばれた大型ミッションで、2022年に打ち上げを予定しています。2030年に木星に到達し3年間滞在して詳細を観測する計画です。木星大気と磁気圏の他にガリレオが発見した4つの月、イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストにも注目しています。木星とその月は太陽系のミニチュアとして形成初期に太陽と惑星と同じような関係を築いていたと考えられています。火山性のイオ、氷の世界であるエウロパ、固体氷の存在がわかっているガニメデとカリストそれらが生命の存在しうる潜在性があるかという点にも研究の主題があります。JUICEは、エウロパについて氷の厚さも観測し、独自の磁場を持つガニメデの周回軌道もとる予定です。ガニメデでは、月表面付近に発見されている海も含めた構造を探査することになっています。

日本でも、2010年に打ち上げた小型ソーラー電力セイル実証機「イカロス」の成功を受けて、2020年頃の打ち上げを目標に「ソーラー電力セイルによる木星・トロヤ群小惑星探査計画」が進められています。探査機は「50メートル以上の大きさのソーラー電力セイルを展開する母船」と、「木星周回軌道に投入される木星オービター」から成り立ちます。 まず打ち上げ後すぐセイルを展開し、イオンエンジンを駆動するために必要な電力を確保します。 2年後に、イオンエンジンを使った地球スイングバイによる加速で木星へと向かいます。木星へ向かう軌道上で、宇宙赤外線背景放射の観測、黄道光の立体的観測、太陽系ダスト分布の観測、ガンマ線バーストの観測、メインベルト小惑星帯のフライバイ観測を行います。打ち上げから4.5年後、木星に到達するとオービターを木星周回軌道に投入し、木星オーロラの光学観測を行います。そして打ち上げから約9年後、木星をフライバイした母船は、世界で初めて到達するトロヤ群小惑星のランデブー観測を行う計画になっています。

<参考サイト>

木星探査の年表(クリックして拡大)
パイオニアPioneerボイジャーVoyagerガリレオGalileoユリシーズUlyseesカッシーニCassiniニューホランズンNew Horizons