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ベールを脱いだ木星の真実

最終更新 2021.07.26(2007年初版より適宜更新)

火星より更に太陽系の外側には、小惑星帯があり、その更に外側を回るのが木星です。惑星までの距離は簡単に想像し難いものがありますが、そんな時には地球から太陽までの平均距離(※)である1天文単位(AU)(約15億km)という指標が使われます。(※正確には、地球が太陽を回る時の楕円軌道の長半径)

太陽からのおよその距離は、水星が0.387AU、金星が0.723AU、火星が1.524AU、木星が5.203AU、土星が9.537AU、天王星が19.191AU、海王星が30.069AUとなっています。木星は遠いだけでなく、今まで紹介した水星・金星・火星とは異なるタイプの惑星です。木星の直径は実に地球の11倍以上、重力も2倍以上で、非常に強い磁場が存在し、探査船の観測成果としてオーロラも計測されています。

木星探査の距離イメージ
木星探査の距離イメージ

木星の月(衛星)はイオ(Io)、エウロパ(Europa)、ガニメデ(Ganymede)、カリスト(Callisto)の四大衛星を筆頭に、70個以上が確認されており、周囲に小さな粒子が周回する輪が存在することもわかっています。

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パイオニアとボイジャーミッションが明らかにした木星の素顔

木星では、これまで近くを訪れた探査機が、NASAの探査機パイオニア10号、11号(Pioneer-10, Pioneer-11)、ボイジャー1号、2号(Voyager-1, Voyager-2)、ガリレオ探査機と、NASAとESAの共同ミッションである太陽観測衛星ユリシーズ(Ulysses)と土星探査機カッシーニ(Cassini)、そして冥王星探査機ニューホライズンズ(New Horizons) の9機と、まだ決して多くはありません。

1972年3月に打ち上げられたパイオニア10号は、1973年12月3日に、木星半径の約2.8倍にあたる木星上空約20万kmへの最接近を達成しました。初めて木星を真近に映像として見ることに成功した他、木星はガスと液体が支配的な環境であり、強い放射線帯や磁場が存在することを確認し、直接計測を成功させました。パイオニア11号は、10号に続いて1974年12月4日に木星最接近し、木星の放射線や磁場、オーロラ、電波などを観測し、巨大赤斑の撮影に成功しました。

ボイジャー2号が撮影した木星とイオ
ボイジャー2号が撮影した木星とイオ
Credits: NASA

そのほぼ5年後の1979年3月5日にボイジャー1号が木星に最接近し、約1万9千枚の写真を撮影しました。ボイジャー2号も続いて1979年7月9日に木星に最接近し、約1万8千枚の画像を撮影しています。その中で特に注目を集めたのは、衛星イオの活動状態です。先にパイオニアが通過した後、衛星イオの火山活動が変化していることを観測しました。木星の衛星イオの活動が木星の磁場に影響を与えていることが、ボイジャー1号と2号によって計測されました。

1979年のボイジャー1号による発見まで、かすかでわからなかったのですが、木星周囲にも輪が存在します。外側の"Gossamer rings"(外側の"Gossamer"の環とメインリング)とその内側の"Halo"と呼ばれている輪があります。これは小さな月の上で生じた衝突により投げ出されたダストが再構成されたもと考えられています。

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ガリレオの軌道周回船と探査機が明らかにした木星の真実

ボイジャー1号と2号が打ち上げられた1977年から約12年後の1989年10月18日に、ガリレオ(Galileo)が打ち上げられました。ガリレオは、軌道周回船ガリレオ・オービター(Galileo Orbiter)突入用の探査機ガリレオ・プローブ(Galileo Probe)から成るミッションで、その後1995年7月13日に探査機が周回船から切り離され、その年の12月7日に探査機は木星への突入を行いました。

切り離された探査機は、木星の濃く高温で放射線も強い過酷な環境の中、パラシュートを開いてから57分間はデータを送ってきました。それらのデータから、木星は水素とヘリウムガスが主体の星であり、非常に風が強いことなど多くの観測結果が得られました。

軌道周回船は、木星を周回して初めて継続探査を行い、木星の上層大気や電離層、重力場や磁場、プラズマ、木星表面の化学組成などを計測し、最後は2003年9月21日に木星大気に突入して破壊されました。周回船が観測して見つけた木星の月は実に63個を数えました。

木星の四大衛星についても接近探査が行われ、エウロパやガニメデ、カリストの地下に凍った塩水が存在する可能性があること、木星の重力が衛星イオに潮汐力を与えているために形がゆがめられ、活発な火山活動の一因となっていることを突き止めました。データからは、イオに磁場が存在することや木星周辺のダストがイオの活動によるものらしいことがわかっています。

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ユリシーズやカッシーニが接近・観測した木星

ユリシーズ(Ulysses)は、1990年に打ち上げられた米国NASAと欧州ESAの共同ミッションです。カメラは搭載していませんが、特に太陽の北と南の極付近のデータ取得は、それまで極方向の軌道を飛行してデータ取得を行った衛星がなかったことから、太陽系全体の放射線環境を理解する上で貴重なデータとなっています。木星の接近時には木星の放射線環境を計測しています。

ユリシーズは、黄道にそった軌道から、極方向の軌道へと軌道変更を行うために、木星の重力を利用しました。太陽系内の木星軌道までに達する楕円軌道をとって、太陽系の放射線環境を縦方向に移動し、太陽活動周期11年以上にわたる変遷を計測しました。ユリシーズの木星接近は、先に打ち上げられたガリレオより早い1992年2月8日で、その際に木星付近の放射線環境データが取得されました。木星のフライバイと探査は17日間かけて行われました。太陽を極方向に2周回した後の2004年2月4日に、ユリシーズ再び木星に接近・観測を実施し、2009年6月30日に設計寿命を大きく上回り運用を終えました。

1997年10月15日に打ち上げられたカッシーニ(Cassini)は、カッシーニ(Cassini)は、土星の周回とタイタンの着陸探査を目的としたミッションです。1998年4月と1999年6月に金星をフライバイし、1999年8月には地球をフライバイ、1999年の12月から翌年4月にかけて小惑星帯を通過して、2000年12月30日に木星をフライバイしました。接近時に撮影された木星の画像が公開されています。カッシーニはその後土星に向かい、2004年6月に土星に到着しました。

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ニューホライズンズの木星接近通過観測

2006年1月19日に打ち上げられ、2015年7月14日に冥王星に接近、更にカイパーベルト天体を目指して旅をするNASAのニューホライズンズ(New Horizons)は、2007年2月に木星に接近しました。ニューホライズンズは、冥王星への旅に必要な速度を木星のスイングバイによって得る際に、多くの新しい木星周辺の映像を取得したため、是非ご覧になることをお勧めいたします。

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宇宙望遠鏡による木星の衛星の観測

木星については、2002年3月に発表されたチャンドラX線天文観測衛星やドイツのROSAT衛星による観測結果で、木星の極から発している強いX線が確認されてきました。カッシーニは、木星のオーロラだけでなく木星の衛星イオのオーロラの撮影にも成功し、イオの火山が毎秒1トンもの酸素や硫黄ガスを放出し、それが可視光では見えない木星の周りのドーナツ状のガスを構成していることを突き止めました。また、周囲の放射線帯は以前計測されたものより、ずっと厳しいものでした。

2009年7月には、小惑星と思われる衝突から木星大気に斑点を作成する珍しい現象が起こり、地球周回軌道にあるチャンドラX線天文観測衛星とハッブル宇宙望遠鏡による同期観測などが行われました。同じような現象として、更に15年前の1994年の7月にシューメーカー・レビー第9彗星(Shoemaker-Levy 9)が木星に衝撃を与えたことがあります。2010年6月3日にも小惑星による衝撃が撮影されています。

木星表面のシューメーカー・レビー第9彗星による衝突痕
木星表面のシューメーカー・レビー第9彗星による衝突痕(1994年7月18日撮影)
Credits: NASA

ハッブル宇宙望遠鏡による木星の衛星エウロパ(Europa)の観測で、2012年にハッブル宇宙望遠鏡の分光器が水蒸気を検出して以来、10回の観測のうち、2014年1月26日、3月17日、4月4日の画像に水蒸気が噴出するプルームのデータが確認されました。2016年9月27日のNASA公式発表では、エウロパの南極方向から噴き出す間欠泉の情報がもたらされました。エウロパの凍った表面から160km以上の高さにまでプルームが到達していることが確認されています。

同じ木星の衛星ガニメデ(Ganymede)でも、地下における水の層の存在が示唆されています。

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木星の将来探査・将来観測計画について

NASAに於いては、Jupiter Icy Moons Orbiter (JIMO) と木星極軌道を周回させるジュノー(Juno: Unlocking Jupiter's Secrets)がNASAで提案されました。そのうちのひとつのジュノーは、日本時間2011年8月6日に打ち上げられました。2回目の軌道変更マヌーバ DSM-2を2012年9月14日に実施、2013年10月9日に地球をスイングバイし、2016年7月4日に35分間のメインエンジンの逆噴射により、木星の極軌道に投入されました。ジュノーはバスケットボールコートほどの大きさがある探査機で、電力源として、長さ9mの3枚の太陽電池パネルを有しています。

今までの原子力発電ユニット(放射性同位体から生じる崩壊熱を電気に変換する仕組み)を用いていた深宇宙探査機と異なり、ジュノーは太陽電池のみを電力源として木星軌道まで到達した最初の探査機です。その後の軌道変更で14日間の木星軌道に変更予定でしたが、ヘリウムバルブ2基のトラブルにより、それまでの53.4日で長楕円周回軌道のまま観測を進めています。

ジュノーは、8つの計測装置により木星の起源、構造、大気、磁気圏と木星に固体核が存在するかどうかを探査することになっています。搭載されている様々な科学探査装置の一つ、広報目的で搭載された可視光カメラジュノーカム(JunoCam)は、木星軌道投入から6日後に起動されました。ジュノーカムによる木星の極地域のパワフルな画像と、紫外線可視スペクトロメータによる極域のオーロラの様子が発表されています。2017年12月17日に、楕円軌道を周回するジュノーの木星への接近は10回目に達しました。蓄積された画像やデータが公開(参考サイトにリンク)されています。

Juno撮影
Credits: NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS Image processing by Tanya Oleksuik

将来に向けてのNASAの計画には、ルーシー(Lucy)エウロパ・クリッパー(Europa Clipper)があります。ルーシーは、木星のL4、L5(太陽と木星の重力平衡点)に存在している木星のトロヤ群(木星の公転軌道上にある小惑星群)の小惑星計6つに接近して観測する探査機です。2017年1月にNASAのディスカバリープログラムに選ばれたミッションで、2021年10月に打ち上げ、2025年4月に通常の小惑星帯にいる小惑星「1981 EQ」に接近、2027年から2028年にかけて木星のL4にある4つの小惑星を観測した後、2033年にはL5にある小惑星の1つに接近観測を行う予定となっています。

エウロパ・クリッパーは、2024年にファルコン・ヘビーで打ち上げ予定の計画です。高性能で放射線に強い探査機を木星を周回する長い周回軌道に送り込むことで、木星の月への接近飛行を繰り返し、観測を行うものです。搭載が検討されているセンサには、エウロパの表面の高解像度画像を作成し、その組成を決定するためのカメラと分光計が含まれています。搭載レーダーは、月の氷の殻の厚さの計測や、氷床下の地下湖などを探索します。磁力計では、磁場の強さと方向を測定し、月の海洋の深さや塩分濃度の推定が可能になります。熱放射を画像化するシステムでは、エウロパの凍結した表面を観測し、より暖かい水の最近の噴出部を探し、ハッブル宇宙望遠鏡で確かめられている間欠泉の観測や地下水への関連性、エウロパの科学的構造を調査します。エウロパへは接近高度2,700km~25kmの間で45回の接近観測を行う予定です。

2021年10月に打ち上げ予定のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST: James Webb Space Telescope)も、表層の氷の下に海の存在が示唆されているエウロパの観測を予定しています。表面を破る水の噴出は、巨大な海の下から加熱する地質学的なプロセスによるものであることが、ガリレオ探査機の観測により明らかにされています。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線分光器(NIRSpec)と中間赤外装置(MIRI)を使って、このプルームの構成(特にメタン、メタノール、エタンなどの有機物)を解き明かすために分光分析を実施する予定です。

また、ESAのジュース(JUICE: JUpiter ICy moons Explorer)は、ESAの2015年から2025年の科学探査計画である「コズミックビジョン 2015-2025」に最初に選ばれた大型ミッションで、2022年にアリアン5ロケットによる打ち上げを予定しています。JUICEでは、木星大気と磁気圏の他にガリレオが発見した4つの衛星、イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストにも注目しています。

JUICE探査機
JUICE探査機
Credits: ESA/ATG medialab

JUICEは、地球や金星、火星をフライバイした後、2029年に木星軌道に入って木星の周回観測を行い、エウロパへも接近観測を行う予定です。2032年にはガニメデ周回軌道へ投入され、ガニメデを高度5,000km~500kmから観測し、2033年6月にミッションを完了する予定です。

木星とその衛星は、太陽系のミニチュア版のように形成初期に太陽と惑星と同じような関係を築いていたと考えられています。火山性のイオ、氷の世界であるエウロパ、固体氷の存在がわかっているガニメデとカリスト、それらが生命の存在しうる潜在性があるかという点にも研究の主題があります。JUICEは、エウロパで氷の厚さを観測し、ガニメデの周回軌道ではガニメデの独自の磁場の観測や表面付近の水を含めた構造の探査を進める予定です。日本側からもJUICEへの参加をしており、2017年からJAXA内にプロジェクトページが新しく紹介されています。

木星探査の年表
木星探査の年表 Credits: SED
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