宇宙技術開発株式会社

確実に歩を進める地球観測

旧2008年版

※ 2021年改定予定です

宇宙からの地球環境観測について

宇宙からの地球環境観測は、近年非常に多くの国が関心をもって進めています。また、国際的な協力活動が密接であるのもこの分野の特徴です。大袈裟なようですが、商業活動に直結していないにもかかわらずこれだけ結束が固いのは、今後の人類の存続に関わる分野だからこそと思えます。この分野では、特定の国の宇宙の取り組みとして取り上げるのではなく、観測の対象に焦点を絞って取り上げてみました。

近年の衛星による気象観測

宇宙から見た地球環境観測データの利用は、気象を把握することから始まりました。日本で「気象衛星ひまわり」からの情報は、普段の天気予報に欠かせないもので、現在ではこうした観測情報を元にした気象情報は、コンビニエンスストアの売り上げ予測情報にまで利用されています。

気象観測衛星GOES
気象観測衛星GOES

気象衛星は日本上空など特定の場所を観測することが重要で、静止軌道上から雲の様子などがよく観測できる可視から赤外域のセンサを主に利用して、刻々と変化する様子を観測します。米国の海洋・気象観測機関であるNOAA(ノア)では、同じように静止軌道にある気象観測衛星GOES(ゴーズ)から東半球と西半球が観測できる他、極方向にもっと低い800-900kmの高さの軌道を周回する複数の衛星NOAA (正式名はPOES(Polar Operational Environmental Satellites)で、NOAA-Mなどの名前が順につけられている) を利用しています。

また、軍事用とされているDMSPも同じく高度830kmの極まわりの軌道で、2012年9月20日現在18号機(F18)が稼働しており、天候・気象観測の一助を担っています。欧州では長年メテオサット(Meteosat)という静止気象観測衛星のシリーズが活躍し、現在では第二世代のエムエスジー(MSG: Meteosat Second Generation) 衛星が利用されています。2012年7月にMSG-3が打ち上げられ、4号機は2015年4月打ち上げ予定です。

現在の運用機関であるEumetsatとESAが更に極方向に周回する気象観測衛星として開発を進めていたメトップ(MetOp)は、現在では欧州と米国のジョイントミッションとなっており、2006年10月に初号機MetOp-Aが、2012年9月にはMetOp-Bが打ち上げられました。2017年10月にはMetOp-Cが打ち上げ予定となっており、観測頻度向上に役立てられます。また、ロシア、中国、インド、韓国も気象衛星を打ち上げています。

近年は気候変動からくる自然災害が増えており、時々刻々と変わる気温、降水量、風向、風速などの変化を、いかに精度よく把握できるかが、今後の災害からの被害を最小限にくいとめていくために大変重要となっています。雲の発達の把握や雨粒の大きさを認識するためのセンサを搭載した衛星も打ち上げられており、これらは今後の気象予報への貢献が期待されています。

さて、日本では地球シミュレータというスーパーコンピュータを利用して地球環境をシミュレーションするシステムが2002年3月より稼動し、利用されています。地球環境を把握するためには、実際に目に見える現象として現れる天候だけでなく、その変化に繋がっていく様々な要素の量と変化を把握していくことが重要になります。

参考サイト

気象衛星の観測センサと波長(一部)

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衛星 GOES NOAA(POES) MTSAT2
(ひまわり6, 7号)
国/機関 米国/NOAA 米国/NOAA 日本
(センサ名)主たる観測波長/空間分解能 (Imager)
1可視: 0.55-0.75μm/1km
2短波長: 3.80-4.005μm/4km
3湿度: 6.50-7.00μm/4km
赤外1: 10.20-11.20μm/4km
赤外2: 11.50-12.50μm/4km
(AVHRR/3)
1可視: 0.58-0.68μm/1km
2可視・近赤外:0.725-1.00μm/1km
3A: 1.58-1.64μm /1km
3B: 3.54-3.93μm /1km
4: 10.30-11.93μm /1km
5: 11.50-12.50μm /1km 他
可視光: 0.55~0.90μm /1km
赤外1: 10.3~11.3μm/4km
赤外2: 11.5~12.5μm/4km
赤外3: 6.5~7.0μm/4km
赤外4: 3.5~4.0μm/4km
軌道・高度 静止軌道
約35,800 km
(GOES-9/GOES-J:155E、GOES-10/GOES-K:135W、
GOES-11/GOES-L:101Wで運用後終了)
(GOES-12/GOES-M:60W、GOES-13/GOES-N:75W、
GOES-14/GOES-O:105W、GOES-15/GOES-P:135Wで運用中)
太陽同期軌道(極軌道)
807km(NOAA-15/NOAA-K)午前軌道副衛星
849km(NOAA-16/NOAA-L)午後軌道副衛星
810km(NOAA-17/NOAA-M)午前軌道バックアップ
854km(NOAA-18/NOAA-N)午午後軌道副衛星
870km(NOAA-19/NOAA-NPRIME)午後軌道主衛星
静止軌道
約35,800 km
運輸多目的衛星新1号(ひまわり6号)
運輸多目的衛星新2号(ひまわり7号)

地上の状態の観測

地形など地上の様子を観測する衛星は、近年では災害時にも役立てられています。よく利用されている観測データのひとつに、分解能はあまり高くないものの気象衛星としても利用されている米国のNOAA衛星があります。

地上の様子を観測する衛星は、地球を極方向に周回するものが多く、静止衛星と違って、1000km以下のかなり低い高度から観測が行われます。一般に、静止衛星からの画像よりも一度に観測できる範囲は狭い反面、分解能が向上しているという特色があります。よく頻度やレベル(一度に観測できる範囲、分解能など)が、観測の上で議論の対象になりますが、NOAAは地上分解能が1km程度、一度に撮影できる範囲が3,000km程で、複数の衛星があるため、観測頻度も高く、広範囲の変動の把握によく利用されています。

一方、NASAのLandsat-7(ランドサット7号)では、観測幅185kmの観測を行っています。NOAAよりも観測できる範囲は狭いものの、分解能はパンクロ(可視光における広い範囲の波長で撮影し、白黒階調であるグレースケールの画像として見ることができます)で15mとなっています。

ALOS搭載センサのAVNIR2の撮影イメージ
ALOS搭載センサのAVNIR2の撮影イメージ

その他、一度に見ることのできる範囲が狭くなりますが、米国の民間会社のIKONOS(イコノス)衛星、GeoEye(ジオアイ)衛星、QuickBird(クイックバード)衛星、WorldView(ワールドビュー)衛星、OrbView(オーブビュー)衛星、イスラエルのEROS(イーロス)、ロシアのResurs衛星などがあり、1m以下の分解能が実現されています。また、フランスの宇宙機関CNESが打ち上げたSPOT(スポット)衛星でもパンクロは2.5m、Pleiades(プレアデス)衛星は70cmで、台湾、韓国、インドの衛星も高い分解能をもっています。

日本でも、JAXAが2006年1月に打ち上げた陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)で、70kmという広い観測幅で10mの分解能の画像を得ることができます。また、少し先んじてNASAのTerra衛星に搭載されたASTERも日本のセンサであり、可視レベルで15mの地上分解能を持ち、中間赤外域にもいくつか観測波長を持っており、鉱物資源などの研究に活用されています。

また、地形を把握するためには画像だけでなく、高低差を観測するための高度情報が必要です。ALOS衛星のPRISM(プリズム)というセンサでは、3方向から観測する「ステレオ視」を行うことにより、2.5mの分解能を持つ立体視情報も取得することができます。

ALOS搭載センサのPRISMデータ
ALOS搭載センサのPRISMデータ

更に、人間の見ている波長とは大きく異なるマイクロ波を衛星側から出し、その反射を観測するSARセンサによる観測も実施されています。この方式は、天候に影響を受けにくいという特徴があります。SARセンサのデータは、モノクロの画像や、解析を施したカラー画像で紹介・利用されています。JAXAのALOS衛星のPALSARは、このタイプのセンサです。

海外では、カナダ宇宙機関(CSA)のRADARSAT(レーダーサット)衛星や、ドイツのTerraSAR-X(テラサーエックス)衛星、イタリアのCOSMO-SkyMed(コスモスカイメッド)衛星などが同じタイプのセンサによる観測を実施しています。

地上の状態を観測する上で、「分解能」として数値を示されても、ピンと来ない方も多いでしょう。NOAAのように1kmレベルでは、広い範囲の経年変化や季節変動を捉えるのに適しています。

Landsatのように、10mレベルでは大きな工事や建物が認識できるため、更に狭い県単位などの地域的な細かい変化を捉えることができます。更に1mレベルになると、民家や狭い道路もはっきり識別できることから、地図としての用途にも十分対応できるようになってきます。技術開発では、より多くの分野での実用を目指して、センサの多バンド化も進められています。

QuickBird衛星による1m以下の分解能画像
QuickBird衛星による1m以下の分解能画像

分解能を上げるだけでなく、より多バンド化が進められているのは、実用へ繋がる様々な研究用途のためです。今までも赤外や可視の代表的な波長のデータの重ね合わせや相関を求めることによって、植物の活性化の様子や土地の状態の把握が広く行われてきました。更に細かい多くの波長データを組み合わせて利用することにより、実用への幅は広がり、土地だけでなく次に説明する海洋の分野や、水の環境などの把握にも役立つことが期待されています。実利用に於いてもエネルギー資源や鉱物などの探査、漁業、災害把握、農業と可能性が広がっています。

2000年11月に打ち上げられたNASAのEO-1(Earth Observing-1)は、地上観測としては有名なLandsatシリーズをある程度継承すると共に、更に多バンドの観測へシフトした観測衛星となっています。また、現在のLandsat-7と非常に接近して近い軌道をとることで、互いに役立つデータを取得しています。

参考サイト

地上の状態を観測する衛星のセンサと波長(一部)

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衛星 Landsat-7 ALOS Terra EO-1
国/機関 米国/NASA 日本/JAXA 米国/NASA 米国/NASA
(センサ名)
主たる測波長
/空間分解能
(ETM+)
1: 0.45-0.52μm/30m
2: 0.52-0.60μm/30m
3: 0.63-0.69μm/30m
4: 0.76-0.90μm/30m
5: 1.55-1.75μm/30m
6: 10.4-12.5μm/30m
7: 2.08-2.35μm/30m
8: 0.50-0.90μm/15m
(AVNIR-2)
1: 0.42-0.50μm/10m
2: 0.52-0.60μm/10m
3: 0.61-0.69μm/10m
4: 0.76-0.89μm/10m

(PRISM)
0.52-0.77μm/2.5m

(PALSAR)
L-band(1.27GHz)
/10m
(高分解能モード)
/100m
(広観測幅モード)
(ASTER)センサは日本
1: 0.52-0.60μm/15m
2: 0.63-0.69μm/15m
3N及び3B:
0.78-0.86μm/15m
4: 1.600-1.700μm/30m
5: 2.145-2.185μm/30m
6: 2.185-2.225μm/30m
7: 2.235-2.285μm/30m
8: 2.295-2.365μm/30m
9: 2.360-2.430μm/30m
10:8.125-8.475μm/90m
11:8.475-8.825μm/90m
12:8.925-9.275μm/90m
13:10.25-10.95μm/90m
14:10.95-11.65μm/90m
(ALI)
Pan:0.48-0.69μm/10m
MS-1':0.433-0.453μm/30m
MS-1:0.45-0.515μm/30m
MS-2:0.525-0.605μm/30m
MS-3:0.63-0.69μm/30m
MS-4:0.775-0.805μm/30m
MS-4':0.845-0.89μm/30m
MS-5':1.2-1.3μm/30m
MS-5:1.55-1.75μm/30m
MS-7:2.08-2.35μm/30m

(HYPERION)
0.35559-2.57708μm間
242バンドに分割
/ 30m
軌道 太陽同期軌道
16日周期
太陽同期軌道
46日周期
太陽同期軌道
16日周期
太陽同期軌道
16日周期
高度 高度 705km 高度 692km 高度 705km 高度 705km
観測幅 (ETM+) 185km (AVNIR-2) 70km
(PRISM)
35km(3方向モード)
70km(直下視)
(PALSAR)
70km(高分解能モード)
250-350km(高観測幅モード)
(ASTER) 60km (ALI) 37km
(HYPERION) 7.7km

海の状態の観測

地球表面を占める海の割合は、約7割と大変大きく、海の観測はより衛星の本領が発揮できる領域です。海には、海上ブイなど多くの観測点があり、海中や波の高さなどのデータを取得しています。一方、衛星からの表面情報は広い範囲で多くの情報を得ることができます。海上ブイなどの直接観測データと衛星データの双方を利用し、より精度の高い情報が得られるようになってきました。

また、地上の観測で紹介した観測衛星は、ほとんどの場合、海でも利用することが可能です。天候が悪い場合は地上の観測と同様にマイクロ波センサのデータなども活躍します。しかしながら、広いだけに、分解能の高いセンサだけでは、短期間に地球全体をカバーする情報を効率的に得ることができません。そのため、短期間の特定地域の海の変化や港湾監視など、限られた場面に利用されています。

海全体の状態把握には、広い範囲を継続的に撮影すること、波や風などより多くの情報を安定して得ることが必要とされています。現在高い頻度で地球全体の観測データを安定して得られるものとして、NOAA衛星のように1,000km以下の高度を極方向に周回する衛星で、同程度の観測範囲・分解能を持つものが多くなっています。海の状態の観測項目として、海面高度、海の色、海の表面温度などがあります。また、同じ波長域をより多くの狭い波長に分けて得られるデータで、上記項目の他、植物プランクトンの群集などについても把握することができます。

現在観測続行中のものでは、海の表面温度については、NOAA衛星のAVHRRセンサや、Terra(テラ)とAqua(アクア)両衛星に搭載されているMODISセンサなどが利用できます(TerraのASTERセンサは観測終了)。また、MODISセンサは海色や植物プランクトンについても利用できます。2011年6月に上がったAquarius(アクエリアス)衛星では、ESAのSMOS(エスモス)衛星と同様、海の塩分濃度も計測できます。

海の高度や波の観測などについては計測方法が少し変わります。NASA・NOAA・ESA・CNESの共同ミッションのJason-1, 2衛星に搭載されている、レーダ高度計(Altimeter)で海面高度、放射計(Radiometer)で大気中の水蒸気や風速を観測しています。2013年打ち上げ予定のJason-3、2017年打ち上げ予定のJason-CSでも同様の高度計の搭載が計画されています。ESAではERS-1, 2のRA-1、Envisat(エンビサット)とCryoSat(クライオサット)のRA-2と、それぞれレーダ高度計が搭載されており、2010年打ち上げのCryoSat-2とこれから打ち上げのSentinel-3(センチネルシリーズ3号機)でも同様のレーダ高度計計測が行われます。2012年9月に、1992年10月から2010年3月までの18年間の衛星の計測による高度変化結果が発表になり、フィリピン近海では毎年平均10mm(観測期間中18cm)、世界平均でも毎年平均3mm(観測期間中5.4cm)海面が上昇していることがわかりました。

これらの衛星・観測センサは、海洋分野だけでなく、地球環境の変動把握のために、NASA主導で多くの国が参画する国際プロジェクト「EOSプロジェクト(地球観測システム計画)」で活用されています。国際的な枠組みの中で体系的な観測が行われてきている結果として、地球全体の海洋データも、近年はkmオーダの分解能ながら、安定して供給されています。

歴史的にもNASAのNimbus-7(ニンバス)から始まってTOPEX/Poseidon(トペックス衛星レーダ高度計ポセイドン)、ADEOS/NSCAT、SeaWiFS、SeaWinds、SeasatやESAのERS-1, 2のATSR、日本でもMOS-1, 1bを初めJERS-1、ADEOS, ADEOS-IIなど多くの衛星に搭載したセンサを使って海洋の観測は行われてきました。地球観測の衛星は過去も含め多数あるため、ここでは、詳細に紹介できませんが、データやイメージを配布しているNASAのデータ配布センターについて、一部紹介いたします。

参考サイト

海の状態を観測する衛星のセンサと波長(一部)

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衛星 国/機関 (センサ名)
主たる観測項目、観測波長、空間分解能
Terra及びAqua 米国/NASA (MODIS)
海色/植物プランクトン生物地球化学に利用している波長帯
8: 0.405-0.420μm / 1000m
9: 0.438-0.448μm / 1000m
10: 0.483-0.493μm / 1000m
11: 0.526-0.536μm / 1000m
12: 0.546-0.556μm / 1000m
13: 0.662-0.672μm / 1000m
14: 0.673-0.683μm / 1000m
15: 0.743-0.753μm / 1000m
16: 0.862-0.877μm / 1000m

上記以外の観測を行うための波長帯も27チャンネルあり。
陸地、雲、エアロゾル境界 1, 2
陸地、雲、エアロゾル特性 3-7
大気水蒸気 17-19
表面/雲温度 20-23
大気温 24, 25
絹雲/水蒸気 26-28
雲特性 29
オゾン 30
表面/雲温度 31, 32
雲頂高度 33-36
Jason-1/Jason-2 仏国/CNES Jason-1
(Altimeter: POSEIDON-2/Jason-1, POSEIDON-3/Jason-2)
海面高度
Ku帯中の13.6GHz
C帯中の5.3GHz

(Radiometer: JMR/Jason-1, AMR/Jason-2)
大気中水蒸気観測
23.8GHz
海表面の効果
18.7GHz
雨にならない雲の補正のため
34.0GHz

波・海面高度を計測するため精密位置観測システムを搭載。ESAのDoris, LRA, TRSRなど。 現在はNASA, NOAA, ESA, CNESの協力ミッション。

Jason-3が2013年に、Jason-CSが2017年に計画されている。
NOAA (POES) 米国/NASA (AVHRR/3)
1可視: 0.58-0.68μm / 1km
2可視・近赤外: 0.725-1.00μm / 1km
3A: 1.58-1.64μm / 1km
3B: 3.54-3.93μm / 1km
4: 10.30-11.93μm / 1km
5: 11.50-12.50μm / 1km 他

気候変動に関わる大気観測

気候変動を把握する重要な要素ですが、高度によって異なる分布を示す大気は最も衛星からの観測が難しく、近年になって実用レベルの技術に到達したといえます。大気中に含まれる微量な成分を定量的に観測することに成功し、最も早く陽の目を見たのは、「オゾン」の観測です。

大気中のオゾン層は、生命の存続及び進化に影響が大きいとされる紫外線を遮蔽する役割を担っています。太陽からの紫外線が、大気中のオゾン層によって十分に吸収されることがなく、直接地上に降り注いだ場合には、人類だけでなくほとんどの生物が死滅してしまうことは、想像に難くありません。
南半球の上空に局地的に現れるオゾン濃度が薄くなってしまった状態を「オゾンホール」と呼び、皆危機意識を持って受け止めています。実際にニュージーランドやオーストラリアで皮膚がん患者の発症率が上がっているのは、このためと考えられています。

オゾンの濃度変化
オゾンの濃度変化

オゾンの濃度の変動は、NASAのTOMSセンサより継続して観測されてきており、現在はNASAのAura衛星のOMIセンサにより観測が続行されています。

さて、前記の通り国際協力の枠組みで地球環境の観測計画が進められているため、米国の衛星に他国のセンサが載っている場合もあり、データは国境を越えて役立てられています。観測対象の大気は、地球の直径と比較すると非常に薄い部分です。特に、地上14km以下の対流圏、50km以下の成層圏、80km以下の中間圏と、100km以下の部分の観測が求められているのです。

大気観測で難しいのは、この非常に狭い範囲でありながら、高さにより異なっている分布をどのように見分けていくかや、もともと微量な要素の増減を精度よく計測してことにあります。
そこで、同じ成分を異なる方法で観測するセンサが同じ衛星に搭載されるケースが多くなっています。このようにすることで、互いのセンサが得たデータを校正・検証しやすくなります。活躍中のAura衛星も、オゾン計測のための後続センサOMIと共に、HIRDLS、MLS、TESの3つのセンサが搭載されており、オゾンを含む大気中の微量な様々な成分を観測しています。これら微量成分とは、近年の酸性雨の原因となっているとも見られているガス成分、火山活動から出るガス成分、地球の気温を押し上げる温室効果ガス成分、オゾン層破壊に関連している成分などです。まだ安定的なデータ取得までは到達していませんが、世界規模の大気観測が着々と進められています。

日本では、2009年1月に打ち上げられた温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT: Greenhouse gases Observing SATellite)により、「地球温暖化」を進める要因と考えられる二酸化炭素やメタンなどの「温室効果ガス」の濃度を観測しています。

「地球温暖化」は地上の気温が年々上昇していく現象で、洪水や海面上昇などが起き、数世紀以内に大きな地球環境の変動の引き金となる可能性が高いことが指摘されています。そのため、1997年に京都で開かれた第3回気候変動枠組条約締約会議(COP3)では、2008年~2012年の5年間の平均で「温室効果ガス」を1990年水準から6~8割削減することを義務付けています。具体的には日本が6%、米国が7%、EUが8%という量の温室効果ガスを削減することが、2005年11-12月に開催された気候変動枠組条約第11回締約国会議(COP11)でも確認されています。
なお、現在までのCOPの経緯は外務省のページに掲載されています。興味のある方はご覧ください。

京都議定書時に会議開催国だった日本は、アジア地域の環境把握を主導していく立場にもあり、GOSAT衛星はその役割を担った計画といえます。また、同じ年に米国でOCO (Orbiting Carbon Observatory)という「二酸化炭素」と「メタン」を計測する衛星が打ち上げられる予定でしたが、残念ながら打ち上げに失敗しています。現在はOCO-2が計画されています。
この温室効果ガスは、大気の温度を保温し、結果的に押し上げる力のある気体で、上記の京都議定書では、そのうち影響が大きいと考えられている6種類が観測対象に挙げられており、我が国でも以下の削減が目標になっています。

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温室効果ガス名 主に生成源と考えられている原因 削減目標
二酸化炭素 (CO2)
  • 生物の呼吸、バクテリア類の物質の分解作用から発生
  • 石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料消費から発生
  • 建設機械稼働、自動車・船舶・飛行機等の運行、発電所、工場での燃料の燃焼 等大気中の二酸化炭素は、植物が行う光合成や海により吸収される。
基準年1990年の排出量から6%削減
メタン (CH4)
  • 石油、石炭、天然ガスなどの発掘
  • 水田、湖沼、海洋などから発生
  • 燃料の燃焼廃棄物処分場、下水処理場 等
    シベリアの森林地帯タイガの樹木を伐採すると凍土の融解により地中の氷中に閉じ込められていたメタンが大量に発生するとも言われる。大気中のメタンは、水酸基OHとの反応で吸収される。
基準年1990年の排出量から6%削減
一酸化二窒素 (N2O)
  • 燃料の燃焼、自動車・船舶・飛行機等の運行、廃棄物処分場、下水処理場
基準年1995年の排出量から6%削減
ハイドエオフルオロカーボン (HFC)
  • 工業製品の洗浄、発泡剤製造等の利用など
基準年1995年の排出量から6%削減
パーフルオロカーボン (PFC)
  • 半導体工業、アルミニウム工業等に利用するフロンの代替物質
  • 工業生産の過程で副産物
    大気中での寿命が長く、数千年と推定される非常に強力な温室効果ガス。
基準年1995年の排出量から6%削減
六フッ化硫黄 (SF6)
  • 半導体工業、軽金属工業等の利用など
基準年1995年の排出量から6%削減

また、この6種類の温室効果ガスの他に、化学反応により温室効果ガスの増減に関連する前駆物質として、窒素酸化物、フロン、亜酸化窒素、エアロゾルなどがあります。温室効果ガスは、それぞれ温暖化に関わる比重が異なるために、IPCCにより係数が規定されています。1995年のIPCC資料によると、1980年~1990年の二酸化炭素が60%、メタンが15%、亜酸化窒素が6%、フロン11と12の合計が17%の割合で温暖化に影響を与えていることが報告されています。

参考サイト

大気の状態を観測する現在の衛星と将来の衛星(一部)

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衛星 国・機関 打ち上げ年月 軌道・高度 センサ名 主な観測項目
Aura 米国/NASA 2004年7月 太陽同期軌道
705 km
OMI、HIRDLS、MLS、TES O3、H2O、OH、HO2、CH4、CO、HCN、N2O、HNO2、HNO3、N2O5、NO、NO2、ClONO2、CF2Cl2、CFCl3、HCl、HOCl、ClO、BrO、火山性SO2、エアロゾル、極成層圏雲、雲頂高度、絹雲の氷含有量、ジオポテンシャル高度
GOSAT 日本/JAXA 2009年1月
666 km TANSO-FTS、温室効果ガス観測センサ、TANSO-CAI、雲・エアロゾルセンサ 二酸化炭素、メタン、雲、エアロゾル

水・水蒸気の把握

陸・海上などから蒸散した水蒸気は、雨となり湖や川を流れ込み海へ、或いは地中へ染み込みまた蒸発し、地球を循環しています。私たちはその水を利用しています。地球上にある淡水の状態把握は、気候変動とも非常に密接な関わりを持っています。

この状態把握のために、通常の極方向に周回する衛星だけでは、雲も降水も多い中低緯度地域の観測頻度が十分ではありません。そこで、中低緯度地域の観測を頻度よく行うために、米国TRMM衛星の軌道と同じように低緯度を周回する、GPMのコア衛星が計画されています。日本はそのGPMコア衛星にTRMM衛星の「降雨レーダ (PR)」の後継とされる「二周波降水レーダ (DPR)」の搭載を計画しています。GPMコア衛星は平成25年度に日本の種子島宇宙センターから打ち上げられる予定になっています。

極方向に周回する衛星のうち、こうした地球の観測を午後行う衛星群を、A-Train (午後観測の軌道の衛星群 Aqua (アクア), CloudSat (クラウドサット), CALIPSO (カリプソ), PARASOL (パラソル), Aura (オーラ)) と呼び、これらのミッションでは雲の発達を含めた全容解明を目標にしています。

なお、Aqua衛星には、日本のAMSR-Eというセンサが搭載されています(2011年10月4日に運用停止)。PARASOLもA-Train軌道より少し下ながらも2004年12月から2009年12月まで運用され、現在は停止、2012年12月に軌道から離脱予定です(ADEOS衛星に搭載されたPOLDERの改良型が、PARASOL衛星のPOLDERとして活躍)。

日本の水循環に関する観測を行う予定の「地球環境変動観測ミッション (GCOM: Global Change Observation Mission)」衛星2機のうち、マイクロ波放射計AMSR2を搭載するGCOM-W1(第一期水循環変動観測衛星「しずく」Global Change Observation Mission 1st-"Water SHIZUKU")衛星は2012年5月18日に種子島宇宙センターより打ち上げられ、2012年6月29日にA-Trainの仲間入りをしました。

一方、気候変動に関する観測は多波長光学放射計SGLIを搭載するGCOM-C1(Climate)衛星(打上げ予定時期:平成25年度)により実施される計画です。 また、2015年のEarthCARE(アースケア)衛星は、JAXAとESAのジョイントミッションであり、日本の開発した雲レーダーCPR (Wバンド(94GHz)利用) の搭載を予定しています。

米国では先んじて2006年4月に、極及び高緯度の氷をとらえるための観測を行うICESat(アイスサット)衛星、雲について観測を行うCloudSat衛星が打ち上げられています。より先に打ち上げられているAqua衛星、Aura衛星、これからOCO-2も含めてA-Train (Aqua, CloudSat, CALIPSO, Aura, GCOM-W1, +OCO-2) の計画は推進中です。計画中のミッションが実現すると、地球規模で安定したデータが水に関しても得ることができるようになると期待されています。

また、気候変動の要素のひとつである北極圏や南極圏の氷の推移も長い観測経緯により計測されています。NASAのICESat衛星やCSAのRADARSAT衛星、ESAのCryosat-2衛星では、氷の厚さや質を計測するのに優れています。

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