宇宙技術開発株式会社

小惑星と彗星の探査

旧 2018年版

太陽系には、水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星の惑星以外にも沢山の太陽を回る小さな惑星があります。特に火星から木星までの間にはこうした天体が集まっており、小惑星帯 (Asteroid belt)と呼ばれるものがあります。冥王星以遠にも小惑星などが多く存在する場所をカイパーベルト(Kuiper Belt)と呼んでいます。地球から火星の間にも地球近傍天体と呼ばれる小惑星が多く存在していることも忘れてはいけません。

小惑星帯を通過する際に詳細な観測データを送ってきた宇宙機として記憶されているのは、1991年10月に小惑星帯を通過し木星周辺の探査を進めたガリレオ(Galileo)、1997年10月に通過し2017年9月15日まで土星周辺の探査機として活躍したカッシーニ(Cassini)、2006年に火星木星間小惑星帯を通過し冥王星探査を終え、まさにカイパーベルト通過中の探査機ニューホライズンズ(New Horizons)などです。

小惑星帯以外の場所にも、太陽を回る様々な小惑星が存在します。中には地球にとても近い距離にある小惑星もあります。2003年5月に打ち上げられ2010年6月に搭載カプセルで、地球近傍小惑星イトカワのサンプルを回収した日本の「はやぶさ」(MUSES-C)の活躍も記憶に残る快挙でした。

2018年6月には日本の「はやぶさ2」がリュウグウに到着し、ローバー着地、2019年はサンプル取得が迫っています。時間を置かずに、2018年8月から米国のオサイリス・レックス (OSIRIS-REx: Origins, Spectral Interpretation, Resource Identification, Security-Regolith Explorer)小惑星ベンヌ(Bennu)到着し、同じサンプルリターンを目指しています。

小惑星の中には、長い楕円を描いて太陽の周囲を回るため、近地点と遠地点の差が非常に大きなものもあります。このような小惑星が太陽にとても近づく場合は、表面が太陽の熱で熱せられ活性化し、含まれている氷や塵などが気体となり、固体部分の核を包みます。太陽に照らされた気体は明るい光を放つと共に、太陽風に煽られ長い尾を描き、「彗星」と呼ばれます。2014年8月から2016年9月まで活躍した欧州のロゼッタ(Rosetta)も知られています。見た目にわかりやすいためか、宇宙機の歴史的なイベントは、彗星観測の方が早く開始されています。

脚光を浴びたハレー彗星観測機の歴史

彗星をターゲットとした、最も古いミッションの中に、ハレー(Halley)彗星観測を目的としたものがあります。ハレー彗星は、76年周期で地球に接近する彗星で、最も近い来訪は1985年から1986年にかけての冬でしたが、この時期、ハレー彗星観測に向かった6機の探査機はハレー艦隊と呼ばれました。

これらの探査機の中には、金星探査で紹介したロシアの探査機ヴェガ1号と2号(Vega-1, Vega-2)も含まれています。ヴェガという名前も、もともとロシア語のベネラ(金星)とガレイ(ハレー)を併せた名前であり、ヴェガは、金星探査を行い探査機を金星に降ろした後にハレー彗星観測に向かいました。ウェガ1号は、ハレー彗星から1万km、ヴェガ2号は8千kmまで接近しました。

この時に最も近くまで接近した探査機は、ESAのジオット(Giotto)です。最接近の時はハレー彗星から500kmの距離まで迫り、搭載した狭角カメラ、3つの中性子・イオン、ダスト質量計測器、様々なダスト探知器、フォトポラリメータ、プラズマ実験装置などを使った計測を行いました。しかし、最接近の14秒前に塵が当たり、いくつかの機器が破損してしまうという事故に見舞われました。しかし、幸運にもその後姿勢も持ち直し、復帰後の1992年にはグリッグ・スキュレルプ(Grigg-Skjellerup)彗星の観測を行うことが出来ました。ジオットは、この2つの彗星への接近観測で、彗星の核の秘密に迫るデータを取得しました。

さきがけ
「さきがけ」

NASAのアイス(ICE: International CometarySun-Earth Explorer)という探査機は、もともとはISEE-3(International Sun-Earth Explorer 3)とも呼ばれ、ラグランジェ点(※)観測を行うための3機の探査衛星のひとつとして、1978年8月12日に打ち上げられました。ICEはその後、1985年11月にジャコビニ・ジンナー(Giacobini-Zinner)彗星を観測し、1986年3月にハレー彗星の観測も行いました。太陽風や地球磁気圏を調べるために、多くの機器を搭載しており、彗星観測でもプラズマやエネルギー粒子の観測データを取得しました。

2天体以上の重力平衡が生じる場所。天体に比較して小さな質量のものをその場所に維持できる場所として有効活用化が期待されている。月と地球の重力平衡地点を呼ぶことも多いが、この場合は、太陽と地球の重力平衡地点。
太陽と地球のラグランジェ点説明(NASA)

ハレー彗星に関して、日本でも宇宙科学研究所(旧称)から、2つの衛星が上げられています。1985年1月8日打上げの「さきがけ(MS-T5)」と同年8月19日打上げの「すいせい(PLANET-A)」です。「すいせい」は距離15万km、「さきがけ」は距離700万kmに接近し、太陽風イオン観測器、プラズマ波観測器、真空紫外撮像装置などの観測機器でデータを取得しました。

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ハレー彗星観測を行った探査機の概要
ハレー彗星観測を行った探査機の概要
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小惑星・彗星探査機の1990-2010年の活躍

木星周辺の探査を行ったガリレオ(Galileo)は、1995年に木星軌道に到達するまでに、1991年10月29日に小惑星ガスプラ(Gaspra)から1,600kmの距離、1993年8月28日に細長い構造で長方向のわたり幅が100kmほどのイダ(Ida)とその衛星の直径1.5kmほどのダクティル(Dactyl)に2,400kmの距離で接近撮影を行いました。このようなサイズの小惑星も衛星を持ち得ることで話題となりました。また、木星を観測した後に土星の周回観測を行ったカッシーニ(Cassini)も160万kmという遠距離からですが、2000年1月23日に小惑星マサースキー(2685 Masursky)の接近観測をしています。

太陽観測のために1995年12月2日に打上げられたESA/NASA共同ミッションソーホー(SOHO: Solar and Heliospheric Observatory)は、彗星に関して意外な成果をあげました。太陽観測の画像に多くの彗星がとらえられ、2005年8月5日で実に1000個目の彗星発見という記録を打ち立てました。

NASAのシューメーカー(NEAR Shoemaker)は、1996年2月17日に打上げられ、1997年6月27日に小惑星マチルド(Mathilde) に接近、次に地球近傍の小惑星エロス(Eros) の観測へと向かいました。小惑星エロスは13×13×33kmサイズの、地球近傍では2番目に大きい小惑星です。シューメーカーは、ソフトウェアのトラブルのため当初の計画より遅れたものの、2001年には小惑星エロスへ近接飛行、着陸までミッションを続けることができました。しかし、残念ながら、着陸後の交信ができず現在にいたっています。

また、NASAのディープスペース1号(Deep Space 1)は、1998年10月24日に打上げられ、1999年の7月29日に地球近傍の小惑星ブライユ(Braille)へ接近しました。観測により、直径は最も長いところで2.2km、最短部分は1kmと見積もられ、スペクトルは、ヴェスタ(Vesta)という小惑星と似ていることがわかりました。ディープスペース1号は、沢山の観測装置の他にキセノンのイオンエンジンも搭載し、観測だけでなくイオンエンジンの技術的な実証も行いました。2001年9月22日には、ボレリー(Borrelly)彗星に接近、彗星の先頭の気体に包まれている部分(coma)まで入り込み、彗星の核から2,171kmの距離まで近づきました。

NASAのスターダスト(Stardust)は、1999年2月に打ち上げられ、2002年11月2日に小惑星アンネフランク(Annefrank)から3,300kmに接近、2004年1月2日にはヴィルト2(Wild 2)彗星に最接近し、その飛行中に数回にわたりサンプルを収集、画像を取得しました。ヴィルト2彗星は、太陽系の新来者としてあまり知られていない彗星で、太陽系が出来た頃の物質で構成されていると期待されていました。2006年1月15日にサンプルを取得したカプセルは、地球大気圏に突入、回収に成功しています。スターダスト探査機については燃料が十分であることから、後続ミッションとしてエンカウンター(Encounter)あるいはスターダスト・ネクスト(Stardust-NExT)と称し、テンペル1(Tempel1)彗星に2011年2月15日接近・探査しました。次章のディープ・インパクト(Deep Impact)が探査しインパクタを降下させた後に接近したことから、インパクタ跡などについても検証しました。

一方、同様に太陽系内の星間物質や彗星・小惑星のサンプルリターンを目指し、2001年7月3日に打上げられたNASAのコンター(CONTOUR: COmet Nucleus TOUR)は、残念ながら打ち上げ後に地球軌道からの離脱ロケット噴射が正常に実行されず、失敗に終わっています。

はやぶさイオンエンジン
「はやぶさ」イオンエンジン

日本では、2003年5月9日に打上げられ、2005年12月9日小惑星イトカワに接近した「はやぶさ」(MUSES-C)が話題となりました。「はやぶさ」は、多くの困難を乗り越え、世界に先駆けて小惑星からサンプルを取得することに成功しました。

「はやぶさ」は、地球にサンプルを持ち帰るのに、大変な困難に遭遇しました。4台の推進系イオンエンジンの2台が寿命で故障しながらも、残りに切り替えて何とか地球近傍に帰ってきました。そして大気圏突入したカプセルは無事2010年6月13日にオーストラリアにて回収され、見事地球にサンプルを持ち帰ることに成功したのです。帰還時は世界中がそのニュースを報道し、映画もロングラン、そのサンプルについてはサイエンス誌に特集されるなど、注目度が非常に高く、日本人として誇りが持てる成果を挙げました。

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1990年代以降の小惑星及び彗星の探査機概要
1990年代以降の小惑星及び彗星の探査機概要
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小惑星・彗星探査機の2010年以降の活躍

欧州ESAのロゼッタ(Rosetta)は、2004年3月2日に打ち上げられ、チュリュモフ・ゲラシメンコ(comet 67P/Churyumov-Gerasimenko)彗星を目指した宇宙船です。地球と火星の重力を利用し、2008年9月には小惑星帯まで飛行した後、2014年3月にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の接近遭遇、そして11月13日にフィラエ(Philae)を彗星表面に降ろして、2015年8月に彗星が太陽に近づく過程も観測を続け、2016年9月30日にミッションを終了しました。

主な経過として、2005年3月4日に最初に地球のスイングバイ、2007年2月25日に火星のスイングバイ、2007年11月13日に2回目の地球のスイングバイ、2009年11月13日に3回目で最後の地球スイングバイを実施しました。

2回目の地球スイングバイでは、月の観測とヨーロッパの夜景を撮影するのに成功しています。休眠状態のモードだったロゼッタが、2008年7月始めに目覚め、9月6日午前3時58分に小惑星シュテインス(Steins)に最接近しました。小惑星シュテインスは、ケイ酸塩と玄武岩を主な構成としていますが、詳細な特性は明らかにされていませんでした。最接近時は上空800kmまで迫り、観測が行われ、ダイアモンド型の全景が映し出され、得られたデータでは、3D形状だけでなく、表面組成なども分析されています。

また、3回目の2009年11月13日の地球スイングバイの後、2010年7月10日に、小惑星ルテティア(Lutetia)に最接近しました。

その後、再び休眠状態になり、2014年1月20日に太陽から約6億7300キロメートルの場所で、無事起動しました。5, 6月に実施された軌道制御スラスタ噴射により、6月30日に目的のチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星との距離は約7万2千キロメートルになり、ロゼッタのカメラは彗星の姿を捉えます。彗星とのランデブーに必要な速度差も、秒速668メートル分ほど詰めるのに成功しています。7月および8月3日, 6日にも制御を実施、2014年8月6日に目的の彗星から100km程度の軌道に落ち着きました。

ロゼッタの撮影したチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星
ロゼッタの撮影したチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星

着陸機フィラエ(Philae)は詳細計画にそって、日本時間2014年11月13日午前0時33分に目的のチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着陸。午前2時32分に2回バウンドして予定から1kmほど離れたところに着陸しますが、予定外の場所、割れ目へと落ち込んでしまいます。そのため十分に電力を得られなかったフィラエは、各装置の観測データを受信した後休眠状態に移行しました。

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は、大きさは幅約4.1km、約6.3年で太陽を1周する楕円軌道で、最も太陽に近づく地点は地球と火星軌道の間、最も遠い地点は木星付近で、2015年8月13日に太陽に最接近しました。ロゼッタ本体は、フィラエ着陸機のデータ中継に適した少し離れた位置から高度30kmの軌道へ一度移動、2015年2月には高度6kmまで接近観測するものの、同年3月18日に高度14kmで予想外のガス噴出により一時通信が不安定となります。軌道調整を行いつつ観測を続けたロゼッタは、2016年9月30日にミッション終了となりました。

NASAのディープインパクト(Deep Impact)は、2005年1月13日に打上げられ、テンペル1(Tempel1)彗星を目指した宇宙船です。2005年7月2日に搭載したインパクタをテンペル1彗星に衝突させ、宇宙船からの観測を行いました。ミッション自体は8月に終了しましたが、その後も解析は継続されました。前述のように、先に宇宙に出たスターダスト機により再び衝突痕が観測されています。また、ディープインパクトのインパクタではない観測衛星側は、新たなミッションを与えられます。新たにミッションを与えられ、エポキシ(EPOXI)と再命名され、ハートレー2(Hartley 2)彗星への再接近が日本時間2010年11月4日に実現しました。その日午後10時59分にエポキシはハートレー2彗星から700kmまで接近しました。その後も2012年1月にc/2009 P1(Garradd)彗星を遠くから撮影、2013年6月には地球に近づきつつあるアイソン(ISON)彗星の初期の画像を取得し、2013年8月8日の通信を最後にその役割を終えました。

2006年1月19日に打ち上げられた冥王星やカイパーベルトの観測を目的とするNASAのニューホライズンズ(New Horizons)は、打ち上げの同年6月13日に地球-火星間の小惑星APL(JF56)に接近、観測を行った後木星や土星で飛距離を稼ぐためにフライバイを実施し冥王星に向かいました。ニューホライズンズ航法機器などの試験のために、直径2.5kmほどの小惑星APLが10万1,867 km離れた場所から撮影されています。

2010年10月から翌年6月まで月周回観測を行った中国の嫦娥2号(Chang'e 2)は、月軌道を離れた後2012年12月13日に小惑星トータティス(Toutatis)から3.2kmの距離まで迫りました。4.3kmほどの長さのダンベル型の姿が撮影されています。

ドーンの撮影したセレス表面
2018年9月1日ドーンの撮影したセレス表面

NASAのドーン(Dawn)探査機は、火星と木星の間を回る最も早くに発見され最も質量のあるといわれている小惑星セレス(Ceres: ケレスとも言う)ヴェスタ(Vesta)の探査を行うため、2007年9月27日に打ち上げられました。セレスとヴェスタは、私達の太陽系が形成された歴史の上でも初期の46億年以上前の太陽系で、異なった状況で進化したと考えられています。

ヴェスタは火星と木星の間の小惑星帯の中で、2番目に大きい小惑星です。南極にとても大きなクレーターを持つ岩がちな地形で、初期に熱く活動的な星として進化し、その内部は融かされ表面は乾いているようです。初期の溶岩が固まった玄武岩が表面を覆っています。5時間20分ほどの自転周期で、大きさもほんの500km前後の楕円体であるにかかわらず、デブリの衝突でえぐられたと考えられている大きさ460km・深さ13kmもの大きなクレーターがあります。この衝突時にはヴェスタの質量の1パーセントにあたるものが、沢山の破片となり宇宙に放り出されたと予測されています。ドイツで発見された10cmほどの隕石のひとつが、このヴェスタの外殻であると報じられ保管されています。

一方、セレスは、存在した水がその星を冷たく保ったと考えられ、その外側を覆う塵などの下には、今も水が豊富に存在していることが期待されています。ヴェスタが進化・変化している一方、セレスは基本的な状態で残っていると想定されています。観測によれば、サイズは900km強の回転楕円体で、自転周期は9時間45分、中心にへ行くに従って重く表面に行くに従って軽い鉱物で形成されていることがわかっています。天文学者達からは、凍った状態であるものの、セレスの25パーセントもの水があるかもしれないと期待されています。

ドーンでは、NASAのディープスペース1号のミッションにより、成功をおさめた技術であるイオン推進が実用として使用されています。搭載センサは可視カメラ以外に、赤外線マッピングスペクトロメータやガンマ線中性子スペクトロメータなどを積んでいます。ドーンは、2009年2月に火星の重力アシストを受けた後、2011年5月3日に探査機のカメラでヴェスタの映像を捉えました。また2011年7月15日に小惑星ヴェスタの軌道に入り、16日には小惑星ヴェスタと探査機ドーンの距離は16,000kmほどまで迫りました。(その時点で、地球とドーンの距離は1億8800kmほど)2013年1月3日に発表されたニュースでは、ヴェスタの南半球の解析で、広範にわたってに石炭のように黒い物質が点在していることがわかっています。ドーンはヴェスタに約1年間留まって観測を続け、2012年9月5日にヴェスタを離れ、セレスへと向かいました。収集されたデータから作成したヴェスタの地質マップが、2014年11月17日にNASAから公開されました。

2015年4月に到達した科学軌道高度R3(高度1万3,500km周回)の次に、上空4,400kmの周回のサーベイ軌道、2015年8月からは上空1,470kmを周回するHAMO軌道、2015年12月10日からは更に低い高度385kmのLAMO軌道に移り、ドーンは、セレス表面を徐々に良い分解能でマッピングしていきました。

セレスの表面データが詳細化すると、「もともと海王星に近い軌道にいて、その後何らかの理由でそこから現在の小惑星帯の軌道にまで移動し、大きなクレーターを無くす何かがここ数億年でセレスに起こったに違いない」と研究者達は考えるようになりました。大小無数にクレーターを持つヴェスタと異なり、セレスは大きなクレーターのかわりになだらかなくぼみがあり、他にはその中央に白く輝く部分を携えた、より小規模のクレーターが存在していたのです。

この白く輝く部分は、熱水環境でしばしば構成される炭酸塩であるとされました。2016年8月には、セレスの重力データから、内部構造が地球や月の内部にあるような岩石よりも軽い素材で構成されていることが確認されています。2016年10月には高度は1,480kmに戻り、観測が続けられました。2016年12月に発表されたガンマ線・中性子線検知器GRaND (Gamma Ray and Neutron Detector)の計測からは、セレスの水分布は局所的でなく広範囲に豊富に含まれることがわかりました。水素の分布は、水の氷の分布と一致しており、セレスの中緯度地域では高度の高い地域に水素がより豊富にあります。極地域にかけても同じように水素は多くなっていきます。それらは固体の氷の形状ではなく、多孔質の岩石内に含まれる形で存在していると考えられ、岩石重量の10%程度が水であるとされました。

さて、ドーンのイオンエンジンは、ミッション終了までに4基のうち3基まで故障したものの、10年以上のミッション期間中に延べ5.87年、通算4万1,360km/hの速度変化の記録を達成しています。一旦高高度に戻ったドーンは、様々な軌道から観測を試み、2018年6月には高度39kmから、最大のオケイター・クレーター(Occator Crater)の中の輝く白点部分セレスヴィナーリア白斑 (Vinalia Faculae)を観測、2018年10月31日をもって終了とされました。

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2000年代の小惑星及び彗星の探査機概要
2000年代の小惑星及び彗星の探査機概要
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進行中の小惑星・彗星探査

日本では注目の小惑星探査機「はやぶさ2」が2014年12月3日に打ち上げられました。「はやぶさ2」の目的地は小惑星1999JU3です。「はやぶさ2」は打ち上げ後2015年に地球重力を使って軌道・速度変更を行うスイングバイを実施し、2018年6月27日に小惑星1999JU3リュウグウに到着しました。到着後9月21日に、小型ローバー2機を搭載するミネルバ2 (MINERVA-II1: Rover-1A, Rover-1B)が、分離されました。リュウグウ表面の小さい重力を活かしてホップ中の画像が取得されました。10月11日には、搭載の小型着陸機MASCOT (Mobile Asteroid Surface Scout)を分離し、正常にデータを取得しました。また、第2回のタッチダウンリハーサルで上手く活用できなかったレーザー測距LRFが、10月23日から行われた第3回のタッチダウンリハーサルで上手く調整・フィードバック運用できたことを確認しました。

2018年11, 12月には太陽を挟んでリュウグウと地球が正反対の位置に来て、地球との交信を太陽が邪魔をする「合」となるため、リュウグウと距離をとる合運用が実施されました。2, 3月にもタッチダウンリハーサルを実施し、その後インパクタという衝突機を使い小惑星上に人工的にクレーターを形成しました。「はやぶさ2」をクレーターにタッチダウンさせ地下サンプルを取得、2019年11-12月に地球へ向け帰路につき、2020年に地球へサンプルを持ち帰るというスケジュールです。その間に撮影されたリュウグウ表面の地名(英/日名)が公開されました。

リュウグウは、地球と火星の間(近日点0.96AU, 遠日点1.42AU)の軌道、大きさは900mほどで、「はやぶさ」が探査した小惑星イトカワ(S型小惑星)とは異なる種類です。太陽に近い方にある小惑星には、主な材料が岩石質と推定されるS型小惑星が多く見られ、これらは火星や地球など太陽系の内側にある岩石質の惑星たちの原材料について、ヒントを与えてくれます。一方リュウグウは、その表面物質に有機物や含水鉱物を多く含み、炭素質コンドライト質隕石の故郷とされ、地球生命の原材料を調べる上で重要となるC型小惑星です。リュウグウの鉱物組成、地形・内部構造、重力他の科学観測・サンプルリターンは、太陽系や地球、生命の起源と進化過程を紐解く手がかりとなります。

2016年9月9日に打ち上げられた、アリゾナ大とNASAが協力するNASAの小惑星サンプルリターン計画オシリス・レックス(OSIRIS-REx: Origins, Spectral Interpretation, Resource Identification, Security-Regolith Explorer)は、小惑星ベンヌ(Bennu: 1999 RQ36)で取得した物質を解析の上、サンプル60グラムほどをカプセルで地球に持ち帰ります。NASAは過去に何度か小惑星・彗星サンプルリターンを計画していますが、スターダスト探査機(1992年2月打ち上げ)の彗星由来と思われる物質の取得(2006年1月15日帰還)が唯一の成功例です。小惑星ベンヌは、直径500mほどの地球近傍の小惑星で、38-41億年前の若い太陽系時代に形成されたとみられ、表面岩石からみて質量が小さいため内部に空洞がある構造ではないかと考えられています。オシリス・レックスは、2018年夏に小惑星ベンヌに到着し10月から探査開始しました。11月2日に撮影された画像は、小型リュウグウと言えるほどそろばんの玉のような形、表面はごつごつしたボルダー(岩塊)となっています。地球へのサンプルリターンは2023年の予定です。

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近年の小惑星及び彗星の探査機概要
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