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ロケット、衛星、情報通信、宇宙ステーション、射場まで。システム開発も含めた運用のエキスパート。

国際宇宙探査シンポジウム第1回 「人類の宇宙探査とその未来」報告

2012年10月30日・31日に経団連会館2F「国際会議場」で宇宙航空研究開発機構(JAXA)の主催する国際宇宙探査シンポジウムが開催されました。(プログラム概要)米国、欧州、ロシア各国の宇宙政策機関の計画設計や主要計画に携わる方々の参加と国内外の企業参加を受けて、無人・有人における将来的な宇宙探査計画について議論が交わされました。
参加者は、宇宙関係各者、一般も多く、大学関係者、学生さん達も2割程度見かけられたのが印象的でした。

1日目第一部では、現状では国際協力の中で宇宙ステーションの次に来る目標がまだはっきりと一致した形で示されていないというスタンスから始まり、各国から日本への継続した国際協力活動へアプローチが求められる形となりました。 次に日本、米国、ロシア、欧州がそれぞれ現在の簡単な成果説明に加え、有人火星探査を最終目標とし、どのように段階を経ていくのかという課題認識が示されました。

第一部「宇宙探査の現状認識」で、米国ジョージワシントン大学のロングストン名誉教授からは、NASAも示す通り、米国ではオバマ大統領が次世代の打ち上げシステム刷新を組み込んだコンストレーションプログラムをキャンセルして以来、次の大統領が誰になるとしても今後4年間NASA予算の増大は見込まれず横ばいで進むとの見解から、国際宇宙ステーションにかかるコストを民間にシフトし、次の段階の輸送システムは既存システムを最大限利活用する方向での努力が示されました。

L2ポイントの観測
L2ポイントの利用

ロシアでは、ツニマーシュシステムデザインセンターのヤコブロフ副センター長から、基本的な開発が無人で進められており、米国の火星ローバー・オポチュニティや月周回衛星のルナ・リコネッサンス・オービタなどにも国際協力として機器を提供したことが示されました。また近年進められている電波天体観測ミッション、無重力細胞実験室ビオン・エヌ(Bion-N)や、2013年予定されている宇宙線観測フォトン・エム(Foton-M)、2014年予定の磁気圏観測プログラムのスペクター(SPECTOR)やレゾナンス(RESONANCE)、太陽観測や紫外線天文観測、宇宙物理銀河系観測(GANMMA-400)、2015年-2017年頃の予定のインド欧州協力の月の南極近辺の探査およびサンプルリターンを目指すミッション、そして欧州協力のエグゾ・マーズ(ExoMars)ミッションとして2016年18年に打ち上げられ接近観測や着陸、ローバー観測が行われる計画、2021年の小惑星探査サンプルリターンを目指すLAS-Pなどのプログラムが紹介されました。いずれも国際協力を念頭に進めており、有人を目指す中での無人での取り組みであることが強調されました。

欧州宇宙機関のデュパス氏からは、ESAが国別ではないGDPに比例した強制参加プログラムと各国で参加選択が可能なプログラムがあり、予算は潤沢ではないが安定しているという立場、各国別々に独自の宇宙探査を目指すのではなく、国際協力を念頭に、開発を行っていく考えを明確にされました。
次に月に向かう計画、2015年打ち上げ予定の水星探査ベピ・コロンボ(BepiColombo)ミッション、2016,18に予定されるExoMars関連ははっきりしてきているものの、2020年以降のISS後の協力体制やアリアン6開発については不明瞭のままであると話されました。

アポロ時代から築かれたネットワーク
アポロ時代から築かれたネットワーク

第2部の基調講演では、国際宇宙航行アカデミー(IAA)コンタント事務局長がモデレータをされる中、米国のノートルダム大学ニール教授と東京大学月尾名誉教授の講演がありました。

ニール教授は、先日なくなったアームストロング元宇宙飛行士を悼む言葉もあり多くの月探査が行われる中、いまだにアポロで持ち帰ったサンプルから検証されることが多いことから有人で実施することは非常に大きな発見が含まれていると発言されました。ご自身まとめられた「New Vision of the Moon 2006」が今年中国語に翻訳されたこと、日本語でも紹介してほしいとのアピールがありました。
月は従来思われてきたよりも水分を多く留めていること、月の内部に流体構造および核の存在も明らかにされてきており、近年の日本のかぐや、インドのチャンドラヤーン1,2号、中国のチャンゲ1,2号、米国ルナ・リコネッサンス・オービターなどから新たに多くの発見がでてきており、これらも含めたアップデート版も作成されたいとのことでした。月面探査には観測網・通信ネットワークなどの確立は不可欠で、将来の月の裏側の観測ミッションのためにも、現在設置してあるだけでなく多くの計測装置の必要があるとのことでした。

月尾名誉教授からは、常にフロンティアに挑戦してきた世界および日本の人々の活動とその結果我々が現在多くのサイバーフロンティア、ナノピコフロンティア、インナー・アース・フロンティアなどの新しいフロンティアを開拓しつつある現状を理系に限らず多くの人にわかる形でご解説いただきました。

第3部のNHK室山開発主幹にモデレータをしていただいた「宇宙探査の意義」では、ロングストン名誉教授、デュパス氏、コンタント事務局長、ニール教授、月尾名誉教授、城山教授、国際宇宙工業会の稲垣顧問、イー・ウーマン社の佐々木社長が一堂に会し積極的な議論が行われました。

震災後の日本の立場として、独自開発や有人宇宙開発に関する予算について難しい状況がある一方で、日本としては宇宙開発に乗り出したからこそ、現在大きなプログラムを実施する時の有人スタンダードが形成されており、また、宇宙通信など宇宙産業全体にもスタンダードが定着したことについて多くの発展があります。日本として国際協力を進めてきた中で、お金には換算できない国際間の信頼関係などの資産が得られていることが改めて示されました。

それに対し、海外陣はより積極的発言にまわり、現在国際宇宙ステーションにおいては稼働しはじめた段階であり、科学的投資コストを議論する段階ではないこと、アポロ時代に比較すると現在のGDPは5倍となっておりその分今の経済状態とは異なること、現在はほんの小さなキューブサット(数kg)で昔の1-2トンクラスの衛星で実施していたことが出来る時代になっており、常に進化は期待できること、予算が増えずともできることは実施していくという強い決意が示されました。

また、国際宇宙ステーションについては、現在かかっている費用をすでに実施したことも含めたトレードオフによって予算が圧縮できることが考え方として示されました。日本に対しISS以遠についても国際協力の枠組みとして活動してほしい強い期待を滲ませました。
国際的に一致した見解として、これから低軌道だけでなく月の重力平衡点ラグランジェポイントのひとつL2ポイントを一時置き場や探査に役立てる、近傍で徐々に新技術の持続テスト、運用を踏まえ着実にこなしていくというロードマップを示すなどの見解が示され、閉会とされました。

有人宇宙探査の意義

2日目は、第4部のパネルディスカッション「有人宇宙探査への挑戦」から始まり、内閣府宇宙審議官の西本宇宙戦略室長、大竹文部科学省大臣官房審議官、世界貿易センター三浦理事長、慶応大学青木教授、ヤコブレフセンター長、ロングストン名誉教授、デュパス氏を迎え、1日目に引き続き室山解説主幹がモデレーターをされました。

室山氏の日本の大震災を踏まえて今必要なものは何か、有人無人含めて宇宙開発をどうするべきかという論題に対し、日本人として科学技術そのものに対する信頼がゆらいだのではなく、運用するということに対しての覚悟や準備がだんだんと薄らいでいたことに対する自戒が必要だということ、また、これを真摯に受け止め、今後も科学技術・産業・安全保障の枠組みで継続した宇宙開発を進めていきたいという骨子が示されました。

また、日本はGDPが縮小、米国の1/15の予算の範囲で多くの宇宙開発を実施していかなくてはならない、という多くの困難な状況にありある意味で転換期に差し掛かっていることも示されました。

最後にデュパス氏からは、無人で進めるもの有人で進めるものそれぞれについて必要なことは実施するということ、どんなにロボット技術が進んでも人間が実施するより素晴らしいことができるわけではないという言葉をいただき、とても印象的でした。

第5部の世界の宇宙探査構想(1)のNASA探査システム局長のダンバッカー氏は、火星を最終目的としていくつかの投資が必要であるが、ISSは探査のための試験施設として手順構築や長期的な運用が可能か試験を実施する意味で重要な役割をになっており、それらへの補給はスペースX社やオービター社、ボーイング社やシエラネバタ社などそれぞれ2017,18年までに模索しており、要となる重量級ロケットについては、次の火星へのステップとして17トンから130トン級の物資の補給を念頭にしていることが明示されました。
このSLS、MPCV、地上システムはケネディ宇宙センターでの集中制御を考えらているとのこと。2014年9月にはオリオンの試験飛行を実施し、ここでは地球を2周回ほどし次の飛行の85%程度の速度まで試験したいとのこと。2017年「EM-1」は月近傍までの飛行で秒速11kmまで上げることを考えており2021年「EM-2」は有人で4段タイプでの実施ということですが、予算的にこのタイムスケジュールをとっているとのことでした。

ロッキード・マーチン・スペースシステムズのカラス副社長は、コスト制約はあるが我々は最終目的地を2031年の火星の月ダイモスに置きたいということ、より具体的なロードマップが解説されました。火星では現在キュリオシティの作業が往復20分もかかっていることを考えると、人間が行った場合にこうした遅れなしに効率的に作業ができること、各々で平衡点であるラグランジェ点を共通に使うとよいこと、火星に近いフォボスよりダイモスに目的地を絞ったのは、30時間ほどという自転周期、内側に宇宙線を効率的に防げる場所があることなどが話されました。
EM-L2ミッションでは月の裏側のラグランジェポイントにおいて30日間の探査を行うことを仮定されており、L3ポイントでは90日間同じエリアの上空にとどまっていられることから、火星に至る長いミッションの布石として実験可能であり、科学および有人探査の双方で国際協力利用を呼びかけられました。

ボーイング社の宇宙探査事業部門の副社長兼GMであるエルボン氏は、低軌道での輸送や環境制御技術などは確実に実施するとともにISS研究室としての予算を下げるとする一方、今まで成果の出ている筋ジストロフィーの発生の仕組みの解明やサルモネラ菌などのワクチン開発、MRI手術技術開発、生命維持装置の長期信頼性の確立、人体の骨密度や視力に対する重力の影響など2020年までISSが運用される中で実施していくことが語られました。

有人宇宙船開発の状況については、7人乗りの設計とし、現在落下風洞試験を行っている段階であり、これから詳細設計レビュー段階に入り2017年の打ち上げが予定されていることが示されました。

JAXAの山浦執行役からは、日本での有人宇宙開発は、独自での遂行と今まで進めてきたように国際協力の枠組みの中での継続推進が混同されがちであること、宇宙基本計画でも示された通り今後も継続的な計画推進を実施したいという意思が示されました。日本ではCOMETS-SELENE-HAYABUSAというように確実に蓄積してきた技術もあること、月探査としてセレーネ2号、3号のロボティクスミッションと軌道間輸送機OTVの計画が進められていることも話されました。海外から多くの期待の言葉をいただいた通り、国際宇宙探査協働グループ(ISECG)に2011年夏以降JAXAが議長機関となっていることも掲示されました。

三菱重工業の宇宙事業部企画グループ長である竹内氏は、独自で有人計画を推進した場合のモデルを簡単に示され、輸送回数、開発要素といったものが如何に多いか明示され、有人に耐えられるロケットの改良、クルーモジュール開発、サービスモジュール開発などコストおよび期間が国際協力とは比較にならないことを挙げられました。日本企業として、国際パートナーとしての信頼性を得ること、有人や微小重力利用に関する知見を得ること、産業界での活躍の抱負も語られました。

第6部の特別講演である「民間企業の有人活動の取り組み」では野口宇宙飛行士も友情出演され、すぐ後にスペースX社のマツモリ上級副社長が講演されました。スペースX社のドラゴン宇宙船開発はかつてボーイング747の開発棟であった場所を改修して利用されており、従業員のほとんどが共用スペースで作業されているとのこと。
マグレガー試験場、ヴァンデンバーグ基地、ケープカナベラルなどを利用しており、現在のファルコンロケットの発射台はタイタンロケットの発射台の跡地を利用しているそうです。 CEOは、EionMusk氏であり、ファルコン1から始まりファルコン重量級を構想、現在のファルコン9号では静止遷移軌道上(GTO)に1300kgのペイロードを打ち上げる能力があるそうです。すでにドラゴンは3回飛行しており、ドラゴンのエンジンについての安全性は高く、3回目のエンジントラブルの場合もうまく切り離し対処できたとのこと。事実上ドラゴン宇宙船は飛行中の反転も可能であるそうです。

また、なぜ無人なのに窓があるのかとの問いがあるとすればそれはもともと有人を想定していたからだというのが答えだとか。打ち上げは失敗する場合もあるので、どの位資金的にも見越していたかという質問があがり、Musk氏はリスクを相当予想していたものの、最初のファルコンが3機失敗した時には4機目が成功しなければやめていただろうとのことまさに強運なのか、強い意志と信念を持つ故の成功であったのかという面持ちで聞かれた方は多かったと思います。
他国に対する輸送サービスを考えているかとの問いには、既に65%は商業サービスを想定しており、その中には海外が多きな割合を占めているとのことでした。

第7部の世界の有人宇宙探査構想(2)では、三度ヤコブレフ氏が登場、宇宙探査には3つの段階があって研究(Investigation)、探査(Exploration)、利用(Utilization)があり、その開発の理由として、合理的理由と非合理的な理由があると説明。
合理的理由は小惑星の衝突・磁場・環境問題、人口問題、資源枯渇などまた、非合理的理由としては国威向上などがある。2015年までを天文、小惑星、宇宙線研究、太陽や月の研究を挙げている。2020年までに無人の月探査2030年までに天体からのサンプルリターンを、2030年以降有人開発を考えているとのことでした。その中で国際協力、宇宙開発の浸透していない他国についても取り込み、デブリ削減などの対策を考えていると語られました。

ESAのホッヘンバッハ氏によると、11月に行われるESAの閣僚級会合で欧州については、ある程度道筋が見えてくることを明示されており、ISS予算は30%ほどの圧縮を行い、低軌道(LEO)→月(Moon)→火星(Mars)の方向が堅持するとのことでした。
ロシアとの協調ミッションエグゾマーズExoMarsの推進、欧州でも自律的な開発と共に国際協力開発が政治的支援や対話があってこそ進展していくと話されました。欧州の国際協力としては生命維持システムやロボット技術開発について支援されたいとのことで、有人のMPCVについてはバーターで実施、月への輸送面では軌道間輸送、月着陸などそれぞれ考えはあるが国際協力も行いたいということでした。

ドイツ航空宇宙センターのヒル氏は、有人無人技術ともに人類活動領域を広げるというメリットを掲げ、ISSについてはESAを通しての活動、月面着陸・探査機については積極的な貢献を考えたいとのことでした。月については小型の軌道衛星ExoMarsでは2016年ドリルを準備し内部温度構造などの把握も行いたい構えです。

タレス・アレニア・スペース社の先端プログラム長ペリーノ氏からは、すでに火星までのそれぞれの想定をされており技術的にできないことはないこと、ISSの終了する2020年以降を考える段階に入っていること、惑星ランダーや与圧ローバーを考案しており、火星での応用も可能と考えていることが話されました。

欧州EADSアストリウム社戦略・市場開発マネージャのコーシン氏からは、ATV5号機以降は米国のバーターで輸送活動を提供していくものの、フリーフライヤーによる燃料補給や2021年にはスペース・タグ利用を、2024年には無人月探査2030年には有人月探査に向かいたいとのことでした。月探査は無人で月低軌道から有人による制御での探査を実施したい計画もあるようです。

すべて終了してみると、海外・民間会社の指導者達の強いカリスマ性を感じました。 パネルディスカッションに於いて、有人ミッションを進めるにあたっては人命が失われても宇宙開発を進められる覚悟があるのかという点に関して、3割近い参加者が迷わず手をあげたことには驚きました。

また、インターネット中継をしていたこと、質問も多くあったことについてあまり取り上げませんでしたが、会場質問で2名の学生からネイティブに遜色ない英語で、内容としても立派な質問が繰り出されるのを聞き、日本もこういう時代にきたのかなと感銘を受けました。

財政厳しい中なぜ宇宙開発を行うのかが宇宙業界全体で常に問われる問いとなっています。日本では未曾有の震災に見舞われ、宇宙計画への予算にいったい意味があるのかという一般からの声もあり、普段こうした先端技術研究に携わる方々も思っているほど力になれなかったふがいない自分に対する苦悩がないとは言えません。費用対効果を示せとも言われる現在、教育と同じく費用対効果をひとつひとつ求める類のものではない、現在の人間の科学技術の発展として、インターネットしかり宇宙通信やメディアの発展、制御技術や発電技術の向上など現在宇宙なくして存在しなかったものが沢山ある、それらを全て否定するのは人間としての営みを否定するのと同じことではないだろうかという支援の声に対し、これから宇宙探査計画を進めていく国として、誠意をもってまた頭を使って少ない予算でもよりさまざまなことにトライする気概を無くしてはいけないと強く感じました。

開催お報せ(JAXAサイト)

2012年11月6日記