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アラブ首長国連邦(UAE)の火星探査機Mars HOPEとは

公開日 2020.07.16|最終更新 2020.07.20

日本時間2020年7月20日(月)午前6時58分14秒に日本のH-IIAロケットで打ち上げられた、アラブ首長国連邦(UAE)の火星探査機Mars HOPE(火星探査機 「HOPE」(Al-Amal):EMM (Emirates Mars Mission)とも呼ぶ)の、概要を少し紹介致します。なお、ロケットは計画どおり飛行し、打上げ後約56分57秒に「HOPE」は正常に分離された事が確認されました。

本ミッションは、UAEの建国50周年を記念する一大イベントのひとつと注目されていますが、米国NASAにとっても火星探査が開始された同じ50周年にあたります。ミッションは、UAEのドバイにあるMBRSC(Mohammed Bin Rashid Space Centre)のエンジニアや科学者が主導していますが、米国側との協力関係も深いミッションです。

NASAのジェット推進研究所(JPL)側も支援し、センサ開発には深宇宙探査のセンサ開発を常に手掛けるコロラド大学ボールダー校(CU-Boulder)、コロラド大学大気科学研究所UC/LASP(Laboratory for Atmospheric and Space Physics)、カリフォルニア大学バークレー校宇宙科学研究所UCB/SSL(University of California Berkeley / Space Sciences Lab)、アリゾナ大学地球・宇宙探査ASU/SESE(Arizona State University / School of Earth and Space Exploration)と協力しており、双方の国にとっての若手の科学推進プロジェクトとなっています。

Mars HOPEは火星を周回予定の探査機で、重さ1,350kg、太陽電池パドルを開くと長さは7.9mにもなります。以下の3つのセンサを搭載し、火星の大気観測を行う予定です。他の火星ミッションの成果も加え、火星の上層の大気の変化や気候を理解することを目的としています。

  • Emirates eXploration Imager (EXI)
    12メガピクセルの火星の可視画像を撮影するマルチウェーブイメージャ。複数の紫外線バンドを使い薄い大気中の水の氷やオゾンの割合を計測。

  • Emirates Mars Infrared Spectrometer (EMIRS)
    赤外線スペクトロメータ。大気中の塵や氷雲、水蒸気などの光学的な深さを測定。火星の表面と下層大気の温度も測定。

  • Emirates Mars Ultraviolet Spectrometer (EMUS)
    紫外線を使い火星の上層大気の一酸化炭素、酸素、水素などの分布を測定する。

打ち上げから火星ミッションを遂行していくまでの運用は、
(1) 打ち上げフェーズ
(2) 初期運用
(3) 航行フェーズ
(4) 火星周回軌道投入(2021年2月):高度2万km×4万3千km、軌道傾斜角25度、軌道周期55時間
(5) 近点高度1,000kmまで火星に接近する移行フェーズ
を予定しています。火星到達までに約200日かかるため、到着は2021年の2月の予定です。2年間の科学運用が予定されていますが、更に2年間の科学運用延長も想定されています。

火星の大気観測については、米国のメイブン(MAVEN)が周回軌道で実施、これから打ち上げが予定されている中国の火星探査ミッションの軌道機でも主眼の大気センサが搭載されています。

現在火星を周回しているのは、米国のマーズ・オデッセイ(Mars Odyssey)、マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO: Mars Reconnaissance Orbiter)、メイブンと欧州のマーズ・エクスプレス(Mars Express)、インドのマーズ・オービター(MOM: Mars Orbiter Mission)の5機。来年、UAE、中国の新たな周回機が増えれば、火星の大気観測については、米・欧・印に加えた5機関、7衛星が火星の周囲を回り観測する体制が実現すると予想されます。

source : Emirates Mars Mission, CU-Boulder


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