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大気汚染物質の把握も衛星で観測!中国の事例に見る

公開日 2020.03.03 |最終更新 2020.03.27

ひと度、大規模な災害が起こると、その噂は実態と異なる規模に膨れ上がることがあります。災害規模を冷静に推察するのは私たちにとって重要に感じます。衛星における地球の観測は、そのような地上の災害規模を、短時間で、客観的に把握するのに大変に役立ちます。更に、分解能の高い地上観測を行う地球観測衛星が多く登場したことから、地上をつぶさに観測できる画像は有名な一方で、大気を観測する衛星には、あまりスポットライトが当たっていないように思われます。

大気汚染物質の観測を行う衛星は、1990年代後半から一般化してきました。大気汚染物質は大気中に含まれる微量な汚染となるガス成分を計測しています。センサの例としては、NASAのアクアAqua衛星(2002年~)に搭載されたセンサのAIRSやAMSU-A、オーラ(Aura)衛星のOMIなど、OCO-2衛星、日本の温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)、いぶき2号(GOSAT-2)、欧州のセンチネル5プリカーサー(Sentinel-5P)衛星など、意外に沢山の衛星があります。NASAでは50年に亘る大気環境の衛星観測データがあるそうです。

NASAオーラ衛星2013年9月二酸化窒素データ
Credits: NASA

車両や工場の排ガスなど大気汚染の主な原因として観測が行われているものに、二酸化窒素があります。上の画像は、NASAのオーラ衛星が取得した2013年9月のデータから作成されたものです。2013年に中国はPM2.5の問題で深刻な影響を受けており、PM2.5については近年改善がみられていたものの、都市部では依然二酸化窒素濃度は高い状態でした。しかしながら、2020年1月1日~20日と2月10日~25日のデータを比較するとわかる通り、2月10日~25日は、二酸化窒素濃度が非常に低い状態となっています。新型コロナウィルス対策のため、経済活動が制限されている影響とみられます。

中国二酸化窒素濃度比較
Credits: NASA

また、影響が深刻だった武漢周辺の拡大画像では、更に二酸化窒素の大気汚染が低いクリアな状態であることが明らかです。このデータは、欧州宇宙機関ESAのセンチネル5プリカーサー(Sentinel-5P)衛星のTROPOMI(Tropospheric Monitoring Instrument)センサデータと、NASAのオーラ(Aura)衛星のOMI(Ozone Monitoring Instrument)センサが観測したもので、NASAの地球観測データサイトから3月2日に公開されました。観測画像の分解能はTROPOMIが7km×3.5km、OMIが3km×3km、と地上観測のように高くはありませんが、組み合わせて100m×100mほどの分解能に向上させることができます。今回公開された武漢周辺の拡大画像も詳細な様子がわかります。

武漢二酸化窒素濃度比較
Credits: NASA

source : NASA NASA

欧州宇宙機関ESAからは、日本も含めた2019年12月から3月の状況、イタリア周辺の欧州の2020年1月から3月の状況も、センチネル5プリカーサーのデータ解析結果から動画で見ることができます。
日本も含めた二酸化窒素の変遷(ESA)
欧州の二酸化窒素の変遷(ESA)


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