宇宙技術開発株式会社

スーパーローテーションの謎に迫った金星探査機「あかつき」の科学成果の発表

最終更新 2019.11.22

日本時間2019年11月19日(火)午後2時より、金星探査機「あかつき」の観測成果の記者説明会がJAXAから行われました。「あかつき」は、2010年5月の打ち上げ後、同年12月に金星軌道投入予定でしたが失敗、太陽の周囲を公転した後、2015年12月7日に無事金星軌道に無事再投入に成功し観測が行われてきています。金星軌道投入から4年となる今、観測データを観測器の経年劣化も考慮し慎重に解析が行われ、成果が公表されました。「あかつき」は金星の赤道を中心に長楕円で周回する軌道をとり、南北半球を長く観測できる利点がある特長を活かした成果となりました。

金星は硫酸雲が太陽光を反射するとても明るい天体で、地上からも宵や明け方に目視でも明るく確認することができます。しかしその反射率(アルベド)は、10~20年のスケールで変化し、ある種の気候変動が起こっていることが知られているとのことです。金星観測を行っている科学衛星はそう多くはありませんが、過去のNASAのメッセンジャー(Messenger)やESAのヴィーナス・エクスプレス(Venus Express)による観測、継続的に行われているハッブル宇宙望遠鏡による観測などと比較し、値が慎重に比較されています。

紫外線イメージャ(UVI)による観測のデータ解析により、金星のアルベドは高度65kmを中心に2倍位の変化があることがわかりました。金星を覆う(熱くて)厚い大気が高速の風を起こしているスーパーローテーションの解明は今も続いていますが、計算機シミュレーションによれば、アルベドが低くなると強い風が、アルベド値が高くなると風が弱まることがわかっています。研究では、ヴィーナス・エクスプレスの観測期間の前半の実測値では、風がだんだんと強くなっており、その後弱まってきて、あかつきの観測期間では弱まり続けていることが観測データから得られたということです。この10年単位での変動を更に確実とするためには、2020年から2021年に金星をフライバイ予定のベピ・コロンボ水星探査機による金星観測に期待がかかります。

地球では、太陽光から受け取るエネルギーの多くが、地面で受け取られ、その後に大気に渡されて大気の駆動エネルギーとなっています。対して、金星では太陽光から受け取るエネルギーのほとんどが雲で吸収されそこから大気に渡されることで、大気の駆動エネルギーとなっています。雲の変化や温度変化について把握するため、中間赤外線カメラ(LIR)のデータが大きな成果を上げたことも紹介されました。熱潮汐波の全球構造の研究では、太陽のあたる昼とあたらない夜側で温まる場所が変化していき、昼夜でプラスマイナス3度の変動幅、24時間周期の変化と半日周期の変化より、金星の大気シミュレーションとの相違について捉えています。この温度変動は太陽の動きと同方向に現れますが、スーパーローテーションは太陽の移動する方向とは逆側に生じています。

このLIR画像から更にその変動成分(熱潮汐成分)を取り出して金星の地理座標に展開し、雑音を取り除くためにデータを重ね合わせ処理されました。このデータにより、金星表面の昼夜の雲の移動が動画として可視化された成果が発表されました。昼側での雲の動きでは、赤道から高緯度に向かって雲が広がっていく様子が、夜側での雲の動きについては、高緯度から赤道に向けて雲が集まってくるような流れがわかります。理論的な予想がされていたものの、実測データとして検証されたのは初めてとなるということです。

source : JAXA


    関連リンク

    SEDの関連記事