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ESAはAIを導入した宇宙管制の導入へ向かう

最終更新 2019.10.24

地球を取り巻く役目を終えた衛星やロケット、それらの壊れた部品などは、危険なゴミとして宇宙デブリと呼ばれています。各国協力してこうした宇宙デブリから衛星などの機体を保護し、危険を回避するための技術開発が進められています。危険回避のためにまずとられる方法として、衝突回避のための噴射を行い、衛星の軌道を変更する運用が行われます。こうした軌道変更は、ひと昔前は非常にまれなケースでしたが、近年では衝突回避運用として常態化してきています。

衝突回避運用の増加は、近年、低軌道に非常に多くの衛星を配置するコンステレーション計画の打ち上げが開始されていることにも起因します。ESAのレポートによれば、地球周囲の宇宙デブリは2019年1月の時点で、10cm以上の大きさの物体が3万4,000個、1-10cmの大きさの物体が90万個、1mm-1cmの大きさの物体が12,800万個となっています。1957年に宇宙時代へと突入し実に5,450もの打ち上げが行われており、宇宙管制が必要な時代に突入しています。

ESAの衝突回避運用実施のスレッショルドは、9月のSEDニュースでも取り上げた「アイオロス」衛星と「スターリンク44」衛星の衝突回避で示した1万分の1の衝突の可能性です。ESAでは、宇宙デブリと運用衛星の衝突可能性が1万分の1を超えた段階で、衝突回避の運用が実施されます。

この解析を行い衝突回避運用を準備するには時間がかかります。膨大な数のデブリと衛星の、将来的な軌道位置や観測の不確実性を入れて計算し、最終的な衝突可能性としてはじき出す必要があるからです。また、実際の回避運用が増えるほど、燃料を使うため衛星の運用寿命は短くなります。ESAでは、運用している1つの衛星に対して年間複数回の衝突回避運用が必要という解析結果が得られています。低軌道衛星については1週間に2回の解析のフォローアップが要求されています。確実性と速さの観点から、ESAでは機械学習(AI)を使った自動化が進められます。

10月22日のESAの発表では、宇宙での衝突の可能性とリスクを自動的に評価し、衝突回避マヌーバ実施の要否に関する意思決定プロセスを改善し、危険な軌道から離脱するように指示するためのAIを使った衝突回避システムを開発しているということです。この自動化したシステムは軌道上の衛星に装備することも可能で、相手側の衛星と地上の運用者に直接通知することもできるように検討しています。また、他の衛星の軌道制御計画と干渉しないようにする必要があります。このAIを使ったインテリジェンスシステムが、より多くのデータと経験を重ねることにより、リスクに関する予測精度の向上と、意思決定プロセスのエラーの改善、運用コスト低減の実現が期待されます。

source : ESA


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