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水星・金星探査の歴史と計画

各国の水星・金星探査の歴史と計画

太陽系の惑星のうち、水星・金星は地球より内側の軌道を回っています。
水星は、太陽からの距離「地球の約3分の1」と太陽系の中で最も太陽に近く、重力は地球の約3分の1、金星の濃厚な大気とは逆にごく微量な大気しか存在しません。また、地表に地球の月を思わせるようなクレータが目立ちます。

1973年打ち上げられた米国のマリナー10号(Mariner 10)により、こうした水星の概要の確認に加え、自転が遅く、日中と夜の温度差が500度以上という過酷な環境であることがわかりました。また、この観測により弱い磁場が存在することや、周辺の放射線環境なども観測できました。

さて、水星は地球の3分の1ほどの小さな惑星ですが、とても比重が高く、鉄などの重い元素が多く残っていると考えられています。水星探査は、太陽にとても近いということからも困難を極めました。地球より弱いとはいえ、水星に磁場が存在していたことは、水星内で地球と同じように地核上の流体が流動することによって起こっている可能性を示唆しています。しかしながら、水星は地中の温度は鉄を溶かすほどの高温にはなっていないという予想で、融点の低い硫黄などが流体となっているか、過去発生していた磁場の名残を留めているかなどの推定がなされてきました。

金星については、1960年代から米国と旧ソ連が競争するように多くの探査機を打ち上げてきました。米国はマリナー(Mariner)シリーズ、旧ソ連はヴェネラ(Venera)シリーズなどが金星をフライバイ(*注1:接近通過。星の重力を利用して宇宙機の進む方向や速度を変える技術のスウィングバイと同じ意味にも使う場合もある。)時に撮影を試みたり、接近・着陸が試みられました。

金星は、太陽からの距離が地球の約3分の2で公転と逆方向の非常に遅い自転速度であることから、1日が地球の117日ほどもあります。大気圧が90気圧、二酸化炭素が主成分で、二酸化硫黄の雲から硫酸の雨が降り注いでおり、厚い大気で覆われている地表は常に気温400度以上と推定されています。水星とは逆の意味でやはり過酷な環境のようです。

米国マリナー2号では、先の旧ソ連のヴェネラ1号等では成功しなかった金星の観測に成功しています。高い大気圧と遅い自転周期、磁場が非常に弱いことなどがその時にわかっています。その後のマリナー5号では金星高度4000kmに接近し磁場や放射線環境、金星大気などを観測しました。また、マリナー10号では水星撮影に向かう前に金星を通過し高度5768kmからの金星撮影に成功しています。

旧ソ連は、ヴェネラ4号による金星観測は成功しており、その時に初めて金星表面へと降ろされた探査機は高度約25kmで故障するまで計測データを送ってきました。7号・8号では無事着陸しデータを確認。しばらく信号を送ってくることが出来たため、表面温度や気圧、地球の曇っている日の程度の明るさであることなどまでわかりました。1975年のヴェネラ9号、続く10号は見事成功を収めでは、30-35km上空の雲が30-40kmの厚さを持っていること、大気にHCl(塩化水素), HF(フッ化水素), Br(臭素), I(ヨウ素)などの成分が含まれていること、大気圧が90気圧なこと、表面温度が485度、明るさは地球の夏の曇りの日程度であることを計測、写真撮影、大気の風速などを計測し、データを得ることに成功しました。

ロシアでは、1984年に打ち上げたウェガ1号と2号(Vega1/Vega2)、米国でも1978年にパイオニアビーナス(Pioneer Venus1,2)と1989年に打ち上げられたマゼラン(Magellan)と木星探査機のガリレオ(Galileo)が、一応の成果を挙げると、長く金星探査は途切れていました。

<参考サイト>

過去における主な水星・金星探査の年表(1/2)
過去における主な水星・金星探査の年表

過去における主な水星・金星探査の年表(2/2)
過去における主な水星・金星探査の年表

金星探査-近年の成果-

1989年に打ち上げられたNASAのマゼラン(Magellan)は、金星を極方向に周回する衛星として、1990年8月10日から1994年10月12日までデータを地球に送って来ました。成功したミッションのうち、最も大きな成果は、金星の地表の実に98%のレーダーマッピングです。マゼランが搭載する合成開口レーダー(SAR)は、金星の厚い雲の層を通して地表を撮影可能で、撮影された100m以上の解像度のレーダーマッピング画像は、NASAで公開されています。このデータから、地表の85%が火山性の堆積物におおわれていることがわかり、少なくとも過去の火山活動の存在が確認できたことになります。

更に、マゼランでは金星に於ける重力場も詳しく計測し、地形との高い相関を確認しました。しかしながら、地球のように、核の表層におけるマントルにあたる流体運動や磁場の生成過程についての解明には到りませんでした。金星のように濃い大気を持つ惑星は、位置を特定しにくいので、他の観測データと地理的な位置と関連をつけるのは難しいことですが、マゼランが取得した、地表の地形に関するデータが、後続の観測にとても役に立ちました。

一方、木星探査機であるガリレオ(Galileo)も、同じ1990年の2月に金星でフライバイ(*注1:接近通過。星の重力を利用して宇宙機の進む方向や速度を変える技術のスウィングバイと同じ意味にも使う場合もある。)を行う際に、可視・赤外線の画像を取得し、金星大気の様子、磁場などの撮影に成功しました。

ビーナス・エクスプレスによる金星紫外線観測画像

金星観測で現在も目覚しい成果を挙げているESAのビーナス・エクスプレス(Venus Express)は、2005年11月9日に打ち上げられました。

ビーナス・エクスプレスは、火星探査用のマーズ・エクスプレスの衛星バスを基本とした設計になっています。金星周辺の宇宙放射線や磁場を計測するだけでなく、金星の大気やその形成におけるメカニズムの解明を目標として様々な機器を搭載しています。

可視・熱赤外線スペクトロメータ(VIRTIS)では温度データも得られ、ESAのホームページには、マゼランの成果とVIRTISの得た温度データが重ねて表示されています。マゼランとビーナス・エクスプレスのデータは良い相関を示しており、厚い大気下の地表が、高温ながら各地域で温度がかなり異なっていることを裏付けています。

ビーナス・エクスプレスの成果は、ESAのホームページに次々と公開されています。おそらく、惑星科学の研究者達も非常に興味を持って見ていると思います。2007年11月28日のESA報道でも、南極付近の渦の中では、周囲の太陽に温められた大気が冷やされ一気に渦の中に下降していく様子がレポートされています。こうした金星大気の風速は、秒速100mとも計測されていますが、濃い大気により地表付近には達していないようです。また、金星の雷の存在や火山の存在についても示唆されています。

また、ESAの2011年10月6日の発表によれば、ビーナス・エクスプレスは金星のオゾン層も発見しました。オゾン層は地表への紫外線を防ぎ、惑星の酸素形成に関わっていることで知られていますが、金星も火星も生命維持などに十分な量のオゾンは存在していないということです。また、金星のオゾン層は、地球のオゾン層高度の4倍の高さの高度約100kmほどに存在することがわかりました。

メッセンジャーMessenger

NASAのメッセンジャー(Messenger)は、ESAのビーナス・エクスプレスに先立ち2004年8月3日に打ち上げられた探査機ですが、地球フライバイし、2005年12月12日最初の金星フライバイ、2007年6月5日に2回目の金星フライバイにより、金星の撮影に成功しています。

メッセンジャーは、金星フライバイ時に水星への旅に必要な速度を稼ぎましたが、その間に太陽の影を通っています。2回目の金星フライバイでは、ビーナスエクスプレスと同期を取りながら、同地域の夜側の観測を実施しています。

また、その際撮影された遠ざかる金星の映像が、メッセンジャーのサイトで公開されています。

一方、日本でもメッセンジャーに続くミッションとして、2010年5月21日金星探査機PLANET-C(Venus Climate Orbiter)「あかつき」が打ち上げられました。PLANET-Cは金星の大気組成等の謎を更に解き進め、雷の存在も明らかにしていくための様々な観測を行う装置が搭載されています。予定していた軌道投入は失敗、一度は太陽の周りを回ることになりましたが、復活に向けた尽力を行いました。(JAXAの2012年2月1日の発表へ)甲斐あって、2015年12月9日に再度の金星軌道投入に成功を発表。利用可能な機器のチェックを行い、ミッション遂行に向かっています。

また、2018年に打ち上げを予定している、日本と欧州との協力ミッション「ベピコロンボ(BepiColombo)」は、最終到達目標は水星ですが、金星のフライバイの予定があります。

<参考記事サイト>

<参考サイト>

水星探査-近年の成果-

マリナー10号以降、メッセンジャー(MESSENGER)による2008年水星接近まで、水星の探査は行われておらず、水星の様々な現象の解明が期待されています。また水星探査機マリナー10号では、水星全体を観測することができなかったことから、十分なデータを得ることができませんでした。メッセンジャー(MESSENGER)はこうした水星の周囲の放射線環境や磁場、水星表面に関するデータを得るために、マリナー10号より性能の良い機器を搭載して観測に臨みました。

メッセンジャーは、2008年1月と10月6日午後5時40分頃それぞれ水星に接近しました。この接近により、水星の表面の今まで観測できなかった西半球など、全体の90パーセント以上の観測を行うことができました。また、弱い磁場についてもほぼ対称的に分布することがわかりました。非常に薄い大気中のナトリウムとカルシウム、マグネシウム計測についても実施されました。地形もレーザ高度計により詳細に計測され、古い衝突によって作られたクレーター平地の中にある新しい火山性の平地なども観測されました。

この2回の水星接近を経た後、3回目最後の水星フライバイを2009年9月29日に行い、メッセンジャーは、2011年3月18日についに水星の周回軌道に入りました。水星の探査において定常的な周回機となったのもメッセンジャーが初めてでした。

メッセンジャーMessenger

メッセンジャーは、水星の北極近傍に氷として眠る水の存在を解明しようとしています。左の観測データからは、常に日陰となる部分が特定できます。地上からの電波望遠鏡観測などにより1991年来水星の南北極近傍の氷の存在は示唆されていましたが、接近観測による直接確認が出来れば初めてとなり、期待も高まりました。

2014年までにメッセンジャーは水星の全貌を撮影・計測しデータを蓄積しましたが、2014年8月よりミッション終了を意識し徐々に高度を下げた観測に移りました。メッセンジャーは、日本時間2015年5月1日午前4時26分に秒速3.91kmで水星表面シェイクスピア平原の北に衝突し、その生涯を終えました。衝突前の直径93kmのJokaiクレーター中の画像が、最後の撮影となりました。 シェイクスピア平原は、直径400kmの衝突クレーターの跡地で、メッセンジャー衝突後は16mほどの新しいクレーターとなったと思われます。2016年5月7日にはこれらの新しいデータを使った水星全体の新しい高度マップ(DEM)が公開されました。

メッセンジャーと同じように金星をフライバイし、最終的に水星を極方向に周回しながら観測を続けようという計画が、欧州との協力ミッションとして日本も参加しているベピコロンボ(BepiColombo)計画です。この計画は、ESAが担当する3軸制御衛星の水星表面探査機(MPO:Mercury Planetary Orbiter)とJAXAが担当するスピン衛星である水星磁気圏探査機(MMO:Mercury Magnetospheric Orbiter)が協力して水星の磁場・磁気圏・内部・表層について解明を目指すミッションです。

メッセンジャーと同じ極楕円軌道ではありますが、MPO衛星、MMO衛星共に異なる楕円軌道をとり、MMO衛星は太陽の影になる方向の水星の磁場の広がりにあわせて水星を離れる軌道をとります。MPO衛星も同じなのですが、もう少し内側の水星に近い軌道をとります。MPOとMMOのとる軌道は弱い水星磁場を解析するために最適な軌道とも言えます。

ベピコロンボミッションにおけるMPOおよびMMO衛星打上げは、2018年10月の予定で、これらの水星探査の将来計画が成功すれば、メッセンジャーの後も2025年にベピ・コロンボ計画の2衛星が水星に到達、継続観測が可能になります。

<参考サイト>

近年の金星・水星探査と将来計画年表(クリックして拡大)
近年の金星水星探査と将来計画年表

近年の金星・水星探査機と搭載センサ(クリックして拡大)
近年の金星水星探査機と搭載センサ