1. ホーム
  2. 特集TOP
  3. 太陽にチャレンジする衛星たち

最も身近な星 −太陽−  科学観測は国際的な連携・情報交換が活発な分野です。今回取り上げる太陽観測も、多くの団体が関心を持ち、国際的な連携プログラムが実施されています。

 太陽観測は太古より行われており、これが現在の太陽暦になったわけですが、太陽の動きだけではなく、太陽の活動を観測し始めた歴史は、9世紀の中国の記述など太陽黒点に関する記述が各地でも見られ、新しいところではガリレオが1610年に自作望遠鏡を発明し、太陽黒点を発見・観察したという記録が残っています。

太陽黒点といえば、読者の中には、ちょうど右に示すようなスケッチをしたことがある方もいるのではないでしょうか。
簡単に説明すると、まず望遠鏡で太陽をとらえてから、太陽がずれないように望遠鏡でガイドしながら太陽を白画用紙に投影します。そして、写った太陽外形を鉛筆で書き、黒点部分も書き入れて観測日誌(太陽黒点のスケッチ)として残すという、とてもオーソドックスな太陽観測の方法です。
この観測は研究者だけのものではなく、熱心なファンはこの観測結果を天文雑誌や理科年表の統計と比較研究し、太陽活動の周期などを確かめます。

  このように、望遠鏡が現れて以来、更に太陽の活動に関する研究が進んできたわけですが、人工衛星における太陽の謎への挑戦は20世紀後半に入ってからになります。
太陽黒点のスケッチ

▲ページトップへ戻る

何故太陽を観測するのか?  人類は、何故太陽を観測しているのでしょうか?
  回答として、太陽観測の大きな目的を4つ挙げると、
 ひとつは、地球の気候との関わりを把握することです。主に熱収支を把握することが重要な課題となっています。
 二つめは、宇宙での天気(宇宙放射線など)を観測し、太陽風や、太陽フレア発生に伴う地上の紫外線増加やX線増加が大気に吸収される際の熱の増加などを把握することです。これらは人類のみならず宇宙船・人工衛星の運行にも大きな影響を与えるものなので、観測が不可欠です。
 三つめは、「天体としての太陽の誕生とその一生のメカニズムを解明する」ことです。自ら光を発している恒星は、その質量や大きさ・光度によって天文学上の星の進化を知るための分類がされています。「赤色巨星」や「白色矮星」などは皆、様々な大きさの恒星の進化の一過程です。私達の太陽は、この光度による分類(スペクトル型)では、「G2型」に分類されています。タンパク質起源の生命が、安定して進化していく期間、存続可能なちょうど良いエネルギーを得られるということから、同じG2型の恒星の惑星に生命が誕生しやすいという仮説をたてる科学者もいます。太陽が星の進化の過程のどこに位置し、今後どうなっていく運命であるのか、最も身近な星として把握していくことが重要視されています。
 四つめは、「太陽のエネルギー発生の物理学上の仕組みを解明すること」です。いわば大きな核融合炉である太陽が、どのように反応して表面の現象を引き起こしているのか、実のところわかっていることはまだそう多くはありません。
 今後の長期的な観測により、徐々にこれらの謎が明らかにされていくことでしょう。

▲ページトップへ戻る

太陽の何を観測するのか?
太陽の図  太陽観測の用語には、太陽黒点(sun spot)、太陽風(solar wind)、太陽フレア(solar flare)などがあり、太陽は光球、彩層、コロナ部分に大別されています。
日食の時には光球・彩層と呼ばれる部分が月によって隠されてしまうため、地上から「コロナ」の部分をはっきり見ることができます。
太陽の光球の表面温度は約6000度、コロナまでの薄い大気層である彩層は、約1万度でコロナとの境界で急速に温度が上がり、コロナは100万度以上に達する高温のプラズマとなっています。
太陽の光球表面を見ると、周りの温度よりやや低く(約4000度)なるために黒く見えるのが黒点ですが、その黒点は、太陽の表面活動が活発化すると増え、表面での爆発的に見える活発な太陽活動現象である「太陽フレア」の発生が多くなることが知られています。
太陽からは常に「太陽風」と呼ばれる太陽からの輻射(太陽光を含む放射エネルギーなど)があり地球に到達しています。

 太陽表面活動の活発化に伴い、その輻射量は増減します。一般に知られている太陽活動周期11年のうち、最も活動が活発になる時期を「極大期」、活動が沈静化する時期を「極小期」と呼んでいます。太陽からは、X線、γ線を含む電磁波の他、プラズマ化した粒子線(太陽からは主に電子、陽子、アルファ粒子)の「太陽風」が地球までやってきます。太陽風は生命に危険を与えるものですが、地球の磁場と大気が、これらが直接地上に降り注ぐのを防いだり和らげています。
太陽フレアが発生すると太陽からの輻射は一時的に通常の数倍から1万倍にも達します。特別大きなフレアが発生した場合、磁気異常など地球にも大きな影響があるため、太陽バースト現象として天文ファンだけでない多くの人々の関心を集めます。

JAXAようこうの観測した太陽

 太陽活動が活発になる時には地上の紫外線が増しますし、また、バースト現象とも呼ばれる大規模なフレアの場合、宇宙船の中に達してしまう可能性のある中性子線が生じ、宇宙飛行士にも放射線被爆の可能性を与えてしまいます。地球上空の大気はより強くなったX線を吸収することで温まりますので、気候に於いても影響が甚大です。
  バーストが発生すると他にも、人工衛星の機器に異常が見られたり、大気密度が増して軌道が下がった人工衛星の軌道補正をするなど、宇宙の仕事をする人々にとってはより注意しなければならないことが多数あります。
 衛星には、一般に太陽活動周期にあわせた長期の観測が期待されています。
 上記の写真は、JAXAが、1991年に打ち上げた太陽X線観測衛星SOLAR-A(ようこう)が捉えたX線観測画像で、グラフの縦軸が観測年、横軸は太陽黒点数をあらわしています。

SOHOのとらえたプロミネンス コロナの中で「周辺より密度が高く磁場の強い領域」を太陽紅炎(プロミネンス)と呼んでいます。SOLAR-A(ようこう)では、軟X線観測でコロナやプロミネンスの様子をより鮮明にとらえましたし、硬X線望遠鏡では、太陽フレアから高エネルギーの電子が生成されることを解明しました。
また、1995年に打ち上げられたESA/NASA共同ミッションのSOHO衛星でも、左のような鮮明なプロミネンスが撮影されています。SOHO衛星では、極紫外線を利用したコロナ底部から生じる高温プラズマ発生のしくみ解明がすすめられていて、紫外線3バンドの波長をそれぞれRGBにわりつけた太陽のカラー映像なども公開されています。

▲ページトップへ戻る

衛星による太陽観測レース
2006年9月23日JAXAで打ち上げられたSOLAR-Bには、米国NASAやイギリスとの共同開発のセンサもあり、可視光とX線の望遠鏡、極紫外線分光装置が搭載されています。SOLAR-Bは、地球観測衛星のように地球を周回しながら観測を行っています。
また、右に示すイメージのように、2006年10月25日に打ち上げられたSTEREOという米国NASAの衛星では、こうした高温プラズマの発生のしくみなどを2方向から撮影して3D化するという方法も検討されています。
太陽観測の稼働中衛星には、Ulysses、SOHO、TRACE、HESSIなどがあり、それぞれに観測を重ねています。
ESA/NESAの共同ミッションのUlysses(ユリシーズ)は、1990年に打ち上げられた衛星で、地球近傍と木星近傍を極方向に太陽を回る楕円軌道をとっていて、太陽の北極近傍と南極近傍を数年おきに観測できるというユニークなものです。打上げ後18年を経過した今もなお極付近の貴重な太陽観測を行っています。
これらの衛星の活躍により、太陽の観測を更に進め、太陽に隠されている活動のエネルギーやそのしくみが解き明かされていくことが大変楽しみですね。
STEREOの観測イメージ

太陽観測衛星年表

<参考サイト>

▲ページトップへ戻る

主な太陽観測衛星(観測終了衛星)
衛星 Helios1(Helios-A) Helios2(Helios-B) 太陽X線観測衛星
ようこう(SOLAR-A)
ドイツ/米国(NASA) ドイツ//米国(NASA) 日本
搭載センサ名 -plasma detector
-two flux gate magnetometers
-plasma and radio wave experiment
-cosmic-ray detectors
-electron detector
-zodiacal light photometer
-micrometeoroid analyzer
-celestial mechanics experiment
-plasma detector
-two flux gate magnetometers
-search-coil magnetometer
-plasma and radio wave experiment
-cosmic-ray detectors
-electron detectors
-zodiacal light photometer
-micrometeoroid analyzer
-celestial mechanics experiment
-Faraday rotation experiment
-occultation experiment
軟X線望遠鏡(SXT)
硬X線望遠鏡(HXT)
軟X線ブラッグ分光器(BCS)
X線〜γ線広帯域分光器(WBS)
観測期間 打上げ:1974年11月10日
1982年
打上げ:1976年1月15日
1976年4月17日
打上げ:1991年8月30日
2005年9月12日
特記事項     軟X線によりコロナを鮮明に撮影、硬X線望遠鏡により太陽フレアから生じる高エネルギー電子の生成箇所とふるまいを明らかにした。

▲ページトップへ戻る

主な太陽観測衛星(観測中、および、予定衛星)
衛星 Ulysses SOHO(The international Solar and Heliospheric Observatory) TRACE(Transition Region and Coronal Explorer) GENESIS
欧州(ESA)/米国(NASA) 欧州(ESA)/米国(NASA) 米国(NASA) 米国(NASA)
搭載センサ名 -BAM(solar wind plasma experiment)
-GLG(solar wind ion composition experiment)
-HED(magnetic fields experiment)
-KEP(energetic-particle composition/ neutral gas experiment)
-LAN(low-energy charged-particle composition/anisotropy experiment)
-SIM(cosmic rays and solar particles experiment)
-STO(radio/plasma waves experiment)
-HUS(solar x-rays and cosmic gamma-ray bursts experiment)
-GRU(cosmic dust experiment)
-SUMER(solar-ultraviolet emitted radiation experiment)
-CDS(coronal diagnostic spectrometer)
-EIT(extreme ultraviolet imaging telescope)
-UVCS(ultraviolet coronograph spectrometer)
-LASCO(white light/spectrometric coronograph)
-SWAN(solar wind anisotropies experiment)
-CELIAS(charge, element/isotope analysis experiment)
-COSTEP
(suprathermal/energeticparticle analyzer)
-ERNE(energetic-particle analyzer)
-GOLF(global oscillations at low frequencies experiment)
-VIRGO(variability of solar
irradiance experiment)
-MDI(Michelson Doppler imager)
TRACE Telescope  
観測期間 打上げ:1990年10月6日
−現在稼働中
打上げ:1995年12月2日
−現在稼働中
打上げ:1998年4月2日
−現在稼働中
打上げ:2001年8月8日
−現在稼働中
2008年終了予定
特記事項 地球近傍と木星近傍を極方向に太陽を回る楕円軌道。
太陽の北極近傍と南極近傍を数年おきに観測できる。
既に1回目と2回目の極観測を終え、次回は3回目の観測の予定となっている。
極紫外線によるプラズマ観測画像 磁力線構造を高い解像度で撮影 2001年 太陽風サンプル取得、2004年にJSCにてサンプル回収

衛星 HESSI(High Energy Solar Spectrosocopic Imager) SOLAR-B
ひので
STEREO(Solar TErrestrial RElations Observatory)
米国(NASA) 日本 米国(NASA)
搭載センサ名 imaging spectrometer 可視光望遠鏡(SOT)
X線望遠鏡(XRT)
極紫外線撮像分光装置(EIS)
 
観測期間 打上げ:2002年2月5日
−現在稼働中
打上げ:2006年9月23日
−現在稼働中
打上げ:2006年10月25日
2008年まで2年間の予定
特記事項 赤道から38度の傾斜で地球を周回 地球周回軌道より太陽を観測 2衛星による3D観測

衛星 Proba-2 Solar Dynamics Observatory(SDO)
欧州(ESA) 米国(NASA)
搭載センサ名 Sun watcher using APS detectors and image processing (SWAP)
Lyman-alpha radiometer (LYRA)
Thermal plasma measurement unit (TPMU)
Dual segmented Langmuir probe (DSLP)
Helioseismic and Magnetic Imager(HMI)
Atmospheric Imaging Assembly (AIA)
Extreme ultraviolet Variability Experiment (EVE)
観測期間 打上げ:2009年11月2日
−現在稼働中
打上げ:2010年2月11日
特記事項    

▲ページトップへ戻る