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  3. 欧州宇宙機関の補給機ATV

はじめに  国際宇宙ステーションの日本実験モジュール「きぼう」が建設され、日本では、補給物資を運ぶための無人の輸送機「宇宙ステーション補給機(H-II Transfer Vehicle: HTV)」が製造されました。HTV-1号機は2009年9月11日に打ち上げられ、補給後に同年11月2日に大気圏に突入・投棄されました。 2号機についても2011年1月22日に打ち上げられ、同年3月30日には大気圏突入・投棄されています。

 欧州でもコロンバス(COLUMBUS)という与圧実験設備が、既にSTS-122シャトルミッションで打ち上げられ、国際宇宙ステーション上に取り付けられています。
 そして今回取り上げたのは、2008年3月9日に打ち上げた欧州の補給機ATV(Automated Transfer Vehicle)。このATVは複数機計画があるのですが、1号機にあたるATVは、「海底二万マイル」など多くのサイエンスフィクションを生み出したフランスの有名なSF作家の名にちなんで、「ジュール・ヴェルヌ(Jules Verne)」と命名されています。
アリアン5型ES
上記はイメージですが、こんな風にATVはアリアン5型ロケットのフェアリング中に収められています。


欧州補給機ATVの概要
 欧州補給機ATVは、アリアン5型ESロケットで打ち上げ後、現在国際宇宙ステーションと同じく低軌道で地球を周回後にドッキング。水や空気、推進剤の他、貨物を国際宇宙ステーションに補給しています。ATVは、無人補給機で人を乗せるためのものではありません。
 ATVは、デブリ回避などの目的があれば、約300トンの宇宙ステーションを引っ張り軌道高度を上げさせるパワーをもっています。また、無人状態のステーションでも自動的にドッキングできるだけの自律性をそなえているとのこと。2008年6月23日時点で、2回の噴射とドッキング時の実験により、確実にその能力が確認されています。

上記はATVイメージ

 ATV-1号機は、ステーションに初めてドッキングするにあたり、事前に接近試験(最接近は2008年4月1日(火)午前1時38分)が行われました。ATVが、試験時にはステーションのロシアのサービスモジュール「ズヴェズダ(Zvezda)」のすぐ近くの36フィート以内(約10.8m)に接近した後、国際宇宙ステーション第16次長期滞在ミッション搭乗員から、64フィート(約19.2m)地点まで離れるよう指示が送信されました。これら一連の作業実施により無人補給機の安全なドッキングが検証されたことになります。4月3日(木)午後11時45分頃には、ESAのATV制御センターからの制御、ロシアミッションコントロールセンター、ジョンソン宇宙センターの飛行制御の元で、実際にドッキングが遂行されました。
 4月4日(金)には、空気フィルタリング装置が取り付けられ、5日(土)には搭乗員達が中の装置等の他、ズヴェズダのタンクに推進剤、酸素、飲料水を移す運用の準備が開始されました。また、4月25日(金)ATVの噴射により初めて国際宇宙ステーションの軌道変更が実施されました。同6月19日(木)には、第二回目の噴射が約20秒間にわたって続き、国際宇宙ステーションの高度を7kmほど上げるのに成功しています。


上記はATV-1は一番左にドッキング

 なお、ATV-1は、その後約5ヶ月国際宇宙ステーションに残り、2008年9月6日にハッチを締められて切り離され、自身の燃料で軌道制御を行い、9月29日に太平洋上空で大気圏に再突入して燃え尽きました。

 無人補給機では、既にロシアのプログレス(Progress)が活躍していますが、この欧州補給機ATVでは、プログレスの3倍の貨物が搭載できるとあって注目されます。実はアリアンV型ロケットで打ち上げられた中でも最も大きなペイロードでもあります。
1号機ではATV自身の推進剤や国際宇宙ステーションの軌道修正のための推進剤を多く搭載していますが、今後も様々な使い方が期待されています。また、ESA Bulltineによると、5機ほどの製造予定があるとのこと。なお、今回の特別な積荷には船名ともなったフランスの有名なSF作家ジュール・ヴェルヌ(Jules Verne)のイラスト入りの手書き本も搭載されています。

 主なイベント  実施日時・予定(日本標準時刻)
 ATV-1打ち上げ  2008年3月9日(日)午後1時3分
 ATV-1国際宇宙ステーションドッキング
  デモンストレーションにおける最接近
 2008年4月1日(火)午前1時38分
 ATV-1国際宇宙ステーションへドッキング  2008年4月3日(木)午後11時45分〜52分
 空気フィルタリング装置設置のため
 ハッチが開けられ搭乗員が短時間入室
 2008年4月4日(金)午後7時15分〜
 ATV-1ハッチが開けられ貨物運び出しなど
 準備作業開始
 2008年4月5日(土)午前3時15分頃〜
 ATV-1噴射による国際宇宙ステーションの
 軌道変更
 2008年4月25日(金)午後1時22分頃
 ATV-1噴射による国際宇宙ステーションの
 軌道変更
 2008年6月19日(木) 午後3時42分頃
 ATV-1国際宇宙ステーションから切り離し  2008年9月6日(土) 午前6時29分頃
 ATV-1太平洋無人地帯へ投棄  2008年9月29日(月) 午後10時36分頃


 主なATV仕様項目  内容
 太陽アレイを含めた全長  約22.3m
 太陽電池アレイ面積  33.6  平方メートル
 (各 8.4 平方メートルが4枚)
 内部与圧領域  48 立法メートル
 電力出力  4800 W
 ISSへの貨物輸送能力  8.3トン+2.3トン
 ATVの搭載推進剤
(ドッキング時にはISSの軌道制御にも利用される)
 5.8トン
 ・モノメチルヒドラジン 2200kg
 ・酸化窒素 3600kg
 ATVからISSに補給される推進剤  856kg
 nsymmetrical dimethylhydrazine (UDMH)
 oxidiser, nitrogen tetroxide (N2O4)
 ISSの軌道制御に使われる
 ATVからISSに補給される水  270kg
  搭乗員の飲料や食料をもどすなど
 ATVからISSに補給される酸素  21kg ISSでの大気として利用
 ATVからISSに補給される
  ドライカーゴ(乾貨物)
 1.3トン
 食料、衣服、スペアパーツなど


 また、ATV-2号機である「ヨハネス・ケプラー」は、日本時間2011年2月17日(木)午前6時50分打ち上げられました。約4ヶ月にわたるミッションで補給を終え、2011年6月20日(月)午後8時46分に国際宇宙ステーションから切り離されてから大気圏突入噴射を実施、2011年6月21日(火)午前4時59分頃南太平洋へと返ってきた模様です。計画通り機体は燃えました。その際、再突入ブレークアップレコーダー(REBR:ATV-2のブラックボックスにあたる)は回収予定と報道されましたが、残念ながら回収には失敗してしまいました。日本のHTV-2ではこのREBRのデータ取得に成功し、温度、加速度、回転率など貴重なデータを収集するのに成功しています。

 更に、3機目にあたるATV-3号機は、イタリアの著名な物理学者で、欧州宇宙研究機構(ESRO)の設立やESAに関しても大きな貢献をした人物である「エドアルド・アマルディ」と命名されており、日本時間2012年3月23日(金)午後1時34分に打ち上げられました。同3月29日(木)午前7時31分には国際宇宙ステーションとドッキング1.1トンの水や燃料など各種消耗品等を供給しました。ATVの技術的なねらいは、自動的なドッキングシステムの開発・確立にあります。
2011年に発行されたESA Bullteinによれば、2013年にATV-4号機、2015年にATV-5号機が計画されており、ATV-4号機は相対性理論などで有名な「アルバート・アインシュタイン」、ATV-5号機は宇宙におけるビッグ・バン理論の提唱者「ジョルジュ・ルメートル」と命名されています。

<参考記事サイト>
□ESAの補給機ATV-1の国際宇宙ステーションへのドッキングのニュース(英語)へ
□ESAの補給機ATV-1国際宇宙ステーションから切り離しのニュース(英語)へ
□ESAのATV関するブログ(英語)へ
□ESAの補給機ATV-2国際宇宙ステーションから切り離しのニュース(英語)へ
□ESAブログでの補給機ATV-2のブレークアップレコーダー(REBR)回収失敗のニュース(英語)へ
□ESAブログでの補給機ATV-2のブレークアップレコーダー(REBR)概要およびHTV-2でのデータ回収におけるニュース(英語)へ
□ESAの補給機ATV-3のニュース(英語)へ

<参考サイト>
□ESAの補給機ATVのページ(英語)へ

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